経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

『かたつむりがやってくる』 - 移動販売で「買い物難民」を救う! 

特定の店舗を持たず、自動車などで商品を販売する「移動販売」。住宅街やオフィス街、駅前、イベント会場といった人がたくさん集まる場所だけではありません。店があまり存在しない地域や、過疎地などでも導入されています。高齢化が進展する日本で増加して…

『不正会計』 - 金融庁と監査法人のビミョウな関係

「監査法人を扱った作品」の第三弾は、杉田望『不正会計』(講談社文庫、2009年)。金融庁による業界再編という指導のもと、中央と青山が合併して設立された中央青山監査法人。その崩壊もまた、金融庁の「意向」と大きく関わっていたようです。同監査法人を…

『小説会計監査』 - 巨大監査法人崩壊の理由を小説の形で

「監査法人を扱った作品」の第二弾は、細野康弘『小説会計監査』(東洋経済新報社、2007年)。かつて四大監査法人の一角を占めていた中央青山監査法人は、2006年に金融庁より業務停止処分を受けました。著者の細野は、同監査法人に身を置いた公認会計士でし…

『監査法人』 - 「揺るぎのない姿」VS「揺らいでばかりの姿」

難関とされる国家資格の代表例のひとつに、公認会計士があります。会計士は、主に企業の「成績表」である財務諸表が適正に作成されているのかをチェックする役割(=監査業務)を担っています。それによって財務諸表の信頼性が保証され、銀行や投資家の融資…

『ひなた弁当』 - 自分で調達した食材で弁当を作り、路上で販売する

「弁当屋を扱った作品」の第二弾は、山本甲士『ひなた弁当』(小学館文庫、2017年)です。「自分が調達した食材を使って弁当を作り、路上で販売する」弁当屋の物語。リストラで追い詰められた49歳の男性が、本人も気づいていなかった潜在能力を見出し、たく…

『弁当屋さんのおもてなし』 - お弁当に照らし出される作り手の思いと矜持

多くの日本人が日常的にお世話になっているお弁当。その原型は、結構古い時代にまでさかのぼることができます。例えば、「幕の内弁当」は、歌舞伎などの幕間に出された弁当に由来しています。また、鉄道駅や列車内で販売される駅弁も、19世紀末には広く知ら…

『感染領域』 - 謎のウイルスに起因する農作物の異変

「バイオハザード(生物災害)を扱った作品」の第三弾は、くろきすがや『感染領域』(宝島社文庫、2018年)です。人為的に作られた謎のウイルスによって引き起こされたトマトの異変から始まり、全植物の絶滅につながりかねない事件の顛末を描いたバイオサス…

アクセス数3万突破! 

本ブログへのアクセス数が1万を突破したのが20年10月、2万を突破したのが21年9月のこと。そして、この11月4日に3万を突破しました。ご覧になってくださった方々には、お礼を申し上げます。 毎回、特定のテーマを決めて、2冊以上の作品を紹介するというスタ…

『レッドリスト』 - 人類が絶滅危惧種(レッドリスト)に指定される! 

「バイオハザード(生物災害)を扱った作品」の第二弾は、安生正『レッドリスト 絶滅進化論』(幻冬舎文庫、2020年)。ウイルスではなく、高等な哺乳類の急激な進化により、人類が絶滅の危機に直面するというバイオハザードが描かれています。レッドリストと…

『復活の日』 - バイオハザードで人類は絶滅するのか?!

バイオハザード(生物災害)。ウイルスや細菌といった病原微生物や寄生虫などが原因となり、人間の生命や健康、さらには農業・畜産業にも影響を与える災害のことです。非意図的または偶発的に起こった事故(実験室や病院内から外部への漏出)と意図的に引き…

『弊社は買収されました!』 - 買収された企業の社員たちの胸の内

「企業買収を扱った作品」の第三弾は、額賀澪『弊社は買収されました!』(実業之日本社、2022年)です。なにも事情を知らされず、突如として他社に買収されることとなった石鹸会社の社員たちの不安と期待や、企業買収のデメリットとメリットが浮き彫りにさ…

『第三の買収』 - MBO (マネジメント・バイアウト)

「企業買収を扱った作品」の第二弾は、牛島信『第三の買収』(幻冬舎、2007年)です。M&A のひとつに、MBO (マネジメント・バイアウト)と呼ばれる手法があります。それは、企業の経営陣が投資ファンドや金融機関から資金を調達し、既存の株主から自社の株…

『バイアウト』 - 企業買収をめぐるさまざまな人間模様

株式を上場している限り、だれかに株式が買い占められ、乗っ取られるという懸念は完全に払しょくできません。実際、企業買収、M&A(合併と買収)、TOB(株式公開買い付け)といった言葉は、いまではごく日常的に起こりえることとして広く知られています。ち…

『ホテル・コンシェルジュ』 - コンシェルジュは名探偵

「ホテルコンシェルジュを扱った作品」の第二弾は、門井慶喜『ホテル・コンシェルジュ』(文春文庫、2015年)です。「ホテルポラリス京都」が舞台。そこに長期滞在している大学生の桜小路清長が持ち込んでくる厄介ごとの数々に、コンシェルジュの九鬼銀平と…

『小説版 ホテルコンシェルジュ』 - 「おもてなし」の最前線

旅先のホテルで、なにか困ったことが起こり、だれかに聞いてみたいと思ったことはありませんか? そんなとき、適切なアドバイスやサポートをしてくれるのが、コンシェルジュです。彼らが詰めているデスクは、「総合案内所」であり、「なんでも相談所」でもあ…

『エネルギー』 - 「国際資源戦争」の最前線

「石油を扱った作品」の第三弾は、黒木亮『エネルギー』(上下巻、角川文庫、2013年)。イランで発見された新油田をめぐる日本の通産省・商社の思惑と外国企業を引っ張り込みたいイラン側の思惑、「日の丸」油田に対するアメリカの横やり、サハリンの巨大ガ…

『アラビア太郎』 - アラビア石油・創業者の波乱万丈

「石油を扱った作品」の第二弾は、杉森久英『アラビア太郎』(集英社文庫、1981年)です。巨大な石油メジャーに対抗し、ズブの素人であるにもかかわらず、無謀にもペルシア湾での油田開発に挑戦し、成功した最初の日本人。「アラビア石油」の創業者である山…

『油断!』 - 「300万人の生命と全国民財産の7割が失われる」

自動車、飛行機、船などを動かすエネルギーとしてだけではなく、プラスチック・ペットボトル・ビニールといった日用品や、化学繊維による衣料の原料としても広く使われている石油。石油の獲得をめぐる争いは常に熾烈で、現代史を彩るメインテーマのひとつに…

『黄金の稲とヘッジファンド』 - 「世界最大のヘッジファンド」のジレンマ

「ヘッジファンドを扱った作品」の第二弾は、波多野聖『黄金の稲とヘッジファンド』(角川文庫、2021年)。国内で最大級のヘッジファンドと称される金融機関があります。農業協同組合、森林組合、漁業協同組合の系統中央機関の役割を有する金融機関である農林…

『小説 ヘッジファンド』 - デリバティブを駆使する「現代の相場師」

舞台は為替、債券、株式などの金融市場。突然出現し、空売りや裁定取引、デリバティブ(金融派生商品)といった高度な手法を駆使して、集中的に投機行為を行います。マーケットを荒らし、膨大な利益をもぎ取っては去ってしまいます。それが、ヘッジファンド…

『あしたの君へ』 - 家裁調査官補の成長物語

「家裁調査官を扱った作品」の第二弾は、柚月裕子『あしたの君へ』(文芸春秋、2016年)。家裁調査官になるためには、まずは裁判所職員採用総合職試験に合格することが必要です。さらに、2年間の養成課程研修を受けます。研修を受けている間は「家裁調査官補…

『家裁調査官・庵原かのん』 - 非行少年に厚生の道筋を! 

家庭裁判所(略して「家裁」)とは、離婚・遺産相続をはじめとする家庭内のあらゆる問題(家事事件)と少年が起こした事件(少年事件)を扱う裁判所のこと。全国に50ケ所。支部が203ケ所、出張所が77ケ所あります。家裁でいう「少年」とは、罪を犯した場合に…

『広告の会社、作りました』 - フリーのデザイナー+コピーライター=新感覚の広告制作会社

「広告会社を扱った作品」の第五弾は、中村航『広告の会社、作りました』(ポプラ社、2021年)です。広告会社「アド・プラネッツ」が突然倒産することで、就職活動をする羽目に陥ったデザイナーの遠山健一と、フリーランスとして個人事務所を開設しているコピ…

『花のさくら通り』 - 零細広告制作会社と「地域の活性化」

「広告会社を扱った作品」の第四弾は、荻原浩『花のさくら通り』(集英社文庫、2015年)です。都心のオフィスから郊外のさびれた「さくら通り商店街」に引っ越しを余儀なくされた「ユニバーサル広告社」。生き残りをかけた活動を展開するには、地域における存…

『CC:カーボンコピー』 - 中堅広告代理店とクライアント 

「広告会社を扱った作品」の第三弾は、幸田真音『CC:カーボンコピー』(中央公論新社、2008年)です。主人公は、業界中堅の広告代理店「ナガサワ・アド・エージェンシー」に勤める山里香純41歳。広告業界の業務内容や仕事の仕組み、代理店に広告を依頼するク…

『夏の果て』 - 元電通トップクリエーターの自伝的小説

「広告会社を扱った作品」の第二弾は、岡康道『夏の果て』(小学館、2013年)です。著者は、元電通のトップクリエーター。1999年に日本初のクリエイティブ・エージェンシー「TAGBOAT」を創設。少年時代から始まり、電通に入社し、CMプランナー(テレビ・ラジ…

『小説電通』 - 広告代理店同士の熾烈なバトルの行方

目の前に欲しいモノがいくつかあり、どれかを選ぶとします。そんなとき、決め手となるのは、商品の品質・価格・デザイン・評判など、多様です。しかし、広告もまた、判断に大きな影響を与えるのではないでしょうか? 実際、広告の良し悪しは、商品の売れ行き…

『社長のテスト』 - トップの姿を複眼的に描いた「小説仕立てのビジネス書」

「会社のトップを扱った作品」の第五弾は、山崎将志『社長のテスト』(日本経済新聞出版社、2012年)。ベンチャー企業が火災に見舞われ、崩壊の危機に直面。対応を現場に丸投げしようとする阿部常夫社長に代わり、復旧作業を主導したのは、部長の西村健一で…

『Hello, CEO』 - ごく平凡な青年がベンチャー企業のトップに

「会社のトップを扱った作品」の第四弾は、幸田真音『Hello, CEO』(光文社、2007年)です。潜在的な力を持ちながらも、ごく平凡なサラリーマン生活を過ごしていた藤崎翔が、最年少ながら、ベンチャー企業の最高経営責任者(CEO)に就任。果たして、会社はど…

『小説 創業社長死す』 - ワンマンのオーナー経営者の光と影

「会社のトップを扱った作品」の第三弾は、高杉良『小説 創業社長死す』(角川書店、2015年)です。東邦食品工業の創業者で、オーナーでもある小林貢太郎。「飛ぶ鳥を落とす勢い」で会社を発展させてきた彼が急死。彼がいないと何事も機能しないワンマン体制…