作品紹介-3年目
「商社を扱った作品」の第五弾は、永崎将利『小さな宇宙ベンチャーが起こしたキセキ』(アスコム、2020年)です。2017年9月、日本初となる「宇宙商社」Space BDを創業し、たった3年でNASAやJAXAとの協業を果たした代表取締役社長・永崎将利による実話に基づ…
「商社を扱った作品」の第四弾は、百波秋丸『三ツ星商事グルメ課のおいしい仕事』(メディアワークス文庫、2014年)です。会社の経費で「不要な食事」を繰り返していると勘ぐられている総務部グループリソースメンテナンス課(グルメ課)。ところが、そこに…
『不毛地帯』と『空の城』の二作品では、高度成長期における総合商社の変化が扱われていました。その時代の商社にとって、大きな変化とは、主に取り扱うモノが一層拡充されていくプロセスでした。それに対して、バブル崩壊後における商社の変化は、モノだけ…
「商社を扱った作品」の第二弾は、松本清張『空の城』(文春文庫、1982年)です。1904年に安宅弥吉が創設。官営八幡製鉄の指定商社として、国内の鉄鋼市場に強力な地盤を築き上げた安宅産業。しかし、NRC(ニューファンドランド・リファイニング・カンパニー…
就職ランキングで上位を占めている業界のひとつに商社があります。高給取り、海外勤務、ブランド力などが、人気の理由になっているようです。とはいえ、多くの就活生のイメージは、「ラーメンからミサイルまで」と多彩な商品を扱うことや、商社ビジネスの基…
「競馬を扱った作品」の第二弾は、早見和真『ザ・ロイヤル・ファミリー』(新潮社、2019年)です。先に紹介した古内一絵『風の向こうに駆け抜けろ』では、主に旗手・厩務員に焦点が当てられていました。それに対して、この作品では、「馬主の秘書(マネージ…
「いけぇええええええ!」 瑞穂が叫ぶ。最後の直線に入る。伸びる、伸びる、伸びる! まるで空を滑走しているようだ。これだ。この感覚だ……。全身が総毛立ち、狂おしいほどに、激情が込み上げる……。完全に溶け合い、ひとつの翼となった旗手の瑞穂と馬のフィ…
「江戸・東京はじめて物語」の第四弾は、門井慶喜『地中の星』(新潮社、2020年)です。東京に地下鉄を誕生させるという前代未聞の偉業を達成した早川徳次と、工事現場で彼をサポートした大倉土木の総監督・現場監督たちの熱い物語。東京初の地下鉄が同時代…
「江戸・東京はじめて物語」の第三弾は、門井慶喜『東京、はじまる』(文藝春秋、2020年)です。日本人初の建築家となり、日本銀行本店、両国国技館、東京米穀取引所、東京駅などを設計。いわば「東京そのものを建築する」という使命を負わされた辰野金吾の…
「江戸・東京はじめて物語」の第二弾は、伊東潤『江戸を造った男』(朝日新聞出版、2016年)です。前回(1月4日)のブログで取り上げた門井慶喜『家康、江戸を建てる』では、江戸のインフラとして、治水、貨幣、飲料水、江戸城の石垣、天守の建造が整備され…
1590年夏、小田原城攻めの陣中、豊臣秀吉は、徳川家康に次のような主旨のことを告げたそうです。この戦が済み次第、「北条家の旧領である関東八か国をそっくりさしあげよう。合わせて240万石。天下一の広大な土地じゃ。お受けなされい」。しかし、その代わり…
「書店を扱った作品」の第三弾は、小島俊一『会社を潰すな!』(PHP文庫、2019年)。金沢市を中心に6店舗を展開するものの、倒産の危機に直面している本屋「クイーンズブックス」に出向を命じられた銀行マンがその再生のために奮闘します。著者の小島は、実…
「書店を扱った作品」の第二弾は、名取佐和子『金曜日の本屋さん』(ハルキ文庫、2016年)です。北関東の小さな駅の中にあり、喫茶コーナーと巨大な地下倉庫を有している書店「金曜堂」。そこを舞台に、底抜けに明るい店長の南槇乃、ド派手な服装と態度のオ…
「出版不況」「ネット書店や電子書籍の台頭」「改善しない書店の閉店数」「本屋のない地方自治体の増加」といった言葉に示されるように、書店を取り巻く環境は、非常に厳しいと言わざるをえません。「もっぱら本という商品だけを、総花的に陳列・販売すると…
「落語を扱った作品」の第二弾は、平安寿子『こっちへお入り』(祥伝社文庫、2010年)。落語の世界にのめり込むことで、仕事上のストレスが解消されていくことを見出した33歳の独身OL。忘れかけていた他人へのやさしさと、なにかに夢中になる情熱を徐々に取…
テレビ、寄席、舞台などで視聴者や観客を笑わせてくれるプロの落語家。歯切れのいい語り口、ほがらかな表情……。日常的にもさぞかし楽天的なキャラクターの持ち主のように思われがちです。ところが実際には、品と味を兼ね備えた落語を求めて悪戦苦闘を繰り返…
「EVを扱った作品」の第三弾は、梶山三郎『トヨトミの逆襲 小説・巨大自動車企業』(小学館文庫、2021年)です。トヨタをモデルにして創業家とサラリーマン社長の確執を描いた『トヨトミの野望』の続編。「世界のトヨトミ」における2016年から2022年にかけて…
「EVを扱った作品」の第二弾は、高嶋哲夫『EV(イブ)』(角川春樹事務所、2021年)。とても恐ろしい本です。ホラー小説ではありません。世界の自動車業界における「死闘」の最前線を描いた作品です。もしハイブリッドカーが環境対応車として将来的に認めら…
地球の温暖化が深刻化し、脱炭素の流れが急速に進みつつある昨今、いま世界の自動車業界は大きく変わろうとしています。軸となるのは、ガソリン自動車に代わる次世代の環境対応車の開発です。想定されているのは、電気自動車(EV)、燃料電池車、ハイブリッ…
「広岡浅子を扱った作品」の第二弾は、長尾剛『広岡浅子 気高い生涯 明治日本を動かした女性実業家』(PHP文庫、2015年)です。『小説土佐堀川』とはまた異なった視点で広岡浅子の生き様をフォローすることができます。「登場人物や出来事の内容・年次はもち…
放映中のNHK大河ドラマ『青天を衝け』。渋沢栄一をはじめ、五代友厚や岩崎弥太郎など、近代日本の経済的な基盤を創った実業家が登場します。渋沢は元幕臣、五代は元薩摩藩士、岩崎は元土佐藩士と、いずれもれっきとした武士の出身。皆、男性です。当時はまだ…
「医師を扱った作品」の第四弾は、久間十義『禁断のスカルペル』(日本経済新聞出版社、2015年)です。東北のある中規模地域病院が舞台。陸奥哲郎医師の指導のもと、卓抜な技術を有した医師たちによる腎臓移植術が行われていました。しかし、悪くなった腎臓…
「医師を扱った作品」の第三弾は、海堂尊『新装版 チーム・バチスタの栄光』(宝島社文庫、2015年)。そのミステリアスな出来事は果たして「殺人」なのか? 真相が解き明かされていく医療ミステリーです。大学病院における組織や医療の実情、チームで手術を…
「医師を扱った作品」の第二弾は、林宏司『トップナイフ』(河出文庫、2019年)です。トップナイフとは、医師の中でも超一流の技術を持った「頂点の外科医」にのみ与えられる最高の称号。天才的な脳外科医たちの苦悩と希望が描かれています。多くの脚本を手…
テレビドラマでよく取り上げられるお仕事のひとつに、医師があります。医師とは、医師法の適用を受けて、病気の診察、治療、投薬に当たる人のこと。もっぱら研究に従事する研究医を除けば、勤務医と開業医の違いはあるものの、医師の大部分は、患者とじかに…
「外資を扱った作品」の第三弾は、保田隆明『投資銀行青春白書』(ダイヤモンド社、2006年)です。経済や株式の知識をまったく持っていないにもかかわらず、外資系投資銀行「マンハッタン証券」に就職した「イマドキのOL」の奮闘記。企業の合併(M&A)や資金…
「外資を扱った作品」の第二弾は、泉ハナ『外資のオキテ』(角川文庫、2018年)です。外資系企業で働くことを夢見てきた女性が実際に働いてみて経験することになる出来事がリアルに描写されています。就職先を斡旋する派遣会社とのあるべき関係についても考…
経済のグローバル化が進んだ1990年代、外国の資本が日本に大挙して押し寄せました。多くの企業が外資系企業によって買収されました。その結果、外資という存在が大きくクローズアップ。が、その実態は依然としてベールの中です。外資系企業で働いている人た…
「詐欺師を扱った作品」の第三弾は、山崎将志『小悪党』(日本経済新聞出版社、2014年)です。先に紹介した『地面師たち』と『トロイの木馬』は、いずれも詐欺という行為を「騙す詐欺師の視点」から見た作品でした。それに対して、この『子悪党』はいわば「…
「詐欺師を扱った作品」の第二弾は、江上剛『トロイの木馬』(朝日文庫、2020年)です。どうしようもない国家を転覆させたい。が、爆弾など使わない。知恵を働かせて、世の中を転覆させる。それこそが、本書に登場する詐欺師・クルス八十吉たちの矜持なので…