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『書店ガール』シリーズ - 書店員の成長と書店の変化をめぐる10年間の時の流れ

「ドラマの原作本」の第三弾で取り上げるのは、碧野圭『書店ガール』シリーズです。第1巻の原題は2007年に刊行された『ブックストア・ウォーズ』。2012年の文庫本化に当たって『書店ガール』に改題されました。その後、シリーズ化され、2018年の完結編に至るまで毎年一冊のペースで刊行。このシリーズを原作とするドラマ『戦う! 書店ガール』が関西テレビ・フジテレビで放映されたのは、2015年のことです。渡辺麻友さんと稲森いずみさんがW主演でした。それまでに刊行されていたのは第1巻~第4巻で、第5巻~第7巻は放映後に出版されています。本が好きな人には、忘れがたいドラマになったのではないでしょうか! 

 

[おもしろさ] 理子と亜紀の成長ぶりを追跡した「等身大」の物語

実に10年以上もの間、西岡理子と北村亜紀(のちに小幡に改名)に代表される書店ガールの成長ぶりを追跡した非常に貴重なシリーズ、「等身大」の物語です。これほどまでに特定の書店員を長く追跡した小説は皆無ではないでしょうか? 書店員と書店の10年間にも及ぶ「現代史」と言っても過言ではありません。また、リアル書店が生き残り、しかも光り輝き続けるには、どのような施策や努力が必要になるのかについても知ることができる本です。

 

[全7巻構成] 書店員の喜び・楽しみ・苦しみなどすべてが浮き彫りに

7巻にも及ぶシリーズは、それぞれの巻でテーマが設定されています。第1巻では「カリスマ店員」、第2巻では「本屋の運営」や「家庭と仕事の両立」、第3巻では「本屋の存在意義」、第4巻では「就職先としての書店」、第5巻では「ライトノベルと文学作品」、第6巻では「駅ナカ書店の運営」や「メディアミックスのあり方」、第7巻では「業界再編成」が重点的に取り上げられています。と同時に、全体として書店の仕組み、書店の運営、書店員の業務内容・苦悩、本の売り方など、非常に多岐な話題に切り込んでいます。では、第7巻で完結する4人の「書店ガール」の今とは、いかなるものでしょうか? 高梨愛奈は、中学校の司書教師になるとともに、読書クラブの顧問として生徒たちに読書の楽しさを伝えています。宮崎彩加は、JR取手駅駅ナカ書店の店長を経験したあと、故郷の沼津に戻り、大田英司というトルコパンの職人とパートナーを組み、ブックカフェの開業に挑みます。西岡理子は、新興堂書店の吉祥寺店の店長であると同時に、同社の東日本エリア・マネージャであったわけですが、新興堂チェーンを取り巻く業界再編の渦中に巻き込まれていきます。そして、小幡亜紀は、新興堂書店吉祥寺店の店長に就任します。物語では、そうした結末に至るまでのプロセスが描写されています。

 

書店ガール (PHP文芸文庫)

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書店ガール 2 最強のふたり (PHP文芸文庫)

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書店ガール 3 託された一冊 (PHP文芸文庫)

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書店ガール 4 (PHP文芸文庫)

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書店ガール 5 (PHP文芸文庫)

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書店ガール 6 遅れて来た客 (PHP文芸文庫)

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書店ガール 7 旅立ち (PHP文芸文庫)

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