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『破天荒フェニックス』 - メガネ業界に新たなビジネスモデルを! 

「経営者のリーダーシップを扱った作品」の第五弾は、田中修治『破天荒フェニックス オンデーズ再生物語』(幻冬舎、2018年)です。激しい競争を展開しているメガネ業界とメガネチェーン店のオンデーズを描いた作品。著者の田中は、同社の社長であり、本書のモデルでもあります。周囲の大反対にもかかわらず、自分で良しと決めたことには、たとえ「破天荒な案件」であっても果敢に挑戦し続ける社長・田中修治と、彼を助ける参謀格の人物・奥野良孝との距離感が絶妙です。社長のリーダーシップを実現させるには、有能な参謀の存在が不可欠であることを再認識させられます。

 

[おもしろさ] メガネ業界のビジネスモデルへの挑戦

かつては、視力をカバーする医療器具としての側面がかなり強く、値段も高いのが普通であったメガネ。バブル崩壊後、その業界にも価格破壊の波が押し寄せ、低価格とファッション性を武器にしたメガネチェーンが台頭します。ところが、どのメガネ屋でも高額な薄型非球面レンズの追加を「後出しジャンケン」のように提案するという商法で利益を上げるというビジネスモデルが依然として常識となっていました。そのようなメガネ業界にいわば殴り込みをかけるような形で、オンデーズの挑戦がスタート。それは、薄型レンズ追加料金ゼロという「シンプル・プライス」というものでした。圧倒的なナンバーワン企業が存在しないと言われるメガネ業界の新潮流は、どのようなものとなるのでしょうか? メガネ業界の実情を知りたい人には、是非とも読んでほしい本です。

 

[あらすじ] 社長の新提案は失敗続き、でも……

数名の社員たちと小さなデザイン企画の会社を経営している田中修治30歳は、周囲の大反対のなか、将来性を見込んでオンデーズを個人で買収します。反対した理由は、100人中100人が同社は「絶対に倒産する」と言い切るほどの危機に陥っていたからです。それでも、田中は、社員たちを前にした最初のあいさつで、「この会社を必ず大きく成長させて、日本一、いや世界一のメガネチェーンにしていきます」と言い切ります。しかし、内部留保があるわけではなく、銀行からはいっさいの新規貸付けが拒否されてしまい、事態の好転が期待できないまま、危機のレベルは上昇していったのです。しかも、田中の新たな行動は、当初はほとんどが失敗に終わってしまいます。にもかかわらず、業界の常識を打破すべく、果敢なチャレンジを続けていきます。

 

破天荒フェニックス オンデーズ再生物語  (NewsPicks Book)

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