経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

『和菓子のアン』 - 和菓子の魅力と奥深さをあなたに! 

「食べ物を扱った作品」の第三弾は、坂木司『和菓子のアン』(光文社文庫、2012年)です。 和菓子には関心も知識もなかった18歳のアンちゃんが、デパ地下の和菓子屋で働くなかで和菓子の魅力と和菓子屋の店員としての働きがいを見出していきます。

 

[おもしろさ] 売る立場で和菓子を見ると新しい発見が! 

洋菓子とは、明治時代以降に日本に入ってきたもの。それに対して、日本の伝統的な菓子を和菓子と呼んでいます。大福、どら焼き、だんご、ようかん、まんじゅう、もなかなど、種類も豊富で、日本人の日常生活にも深く浸透しています。和菓子の花形商品は、お茶の席とかで使うような、形や色が綺麗なお菓子です。季節の花・木や行事をモチーフにしたものも多いのです。四季折々の風情に合わせた和菓子が職人たちによって作られることで、その世界は幅の広がりと奥行きを作り出してきたのです。和菓子屋の店員には、そのような職人=生産者の心意気を、しっかりと客=消費者に伝えるための知識とコミュニケーション力が求められます。また、客がどのお菓子をどれだけ買うのかを通して、茶道を嗜まれているかどうか、食べる人の男女の数や年齢層、食べられるときのシーンなど、いろいろなことを想像しつつ、状況に応じて適切なお菓子の選び方をアドバイスすることもできるものなのです。このように、この本では、和菓子を売る立場で見ていくときに広がる世界が満喫できるでしょう。

 

[あらすじ] 和菓子の奥深さにどんどん魅せられていきます

梅本杏子(通称アンちゃん)は、太めの18歳。「したいことが特にない。なりたい自分はもっとない」女性です。東京百貨店地下の和菓子屋店「みつ屋」で働き始めました。和菓子に関する知識など、まったく持ち合わせていません。スタッフは、店長の椿はるか、職人志望の社員・立花早太郎、先輩アルバイトの学生・桜井さん。よくわからない彼らに囲まれて、「辞めるにしても、せめて1ケ月は我慢しよう」と思いながら働いている間に、歴史や遊び心に満ち溢れた和菓子の奥深さに魅せられていきます。「『源氏物語』の登場人物とおなじお菓子を今でもたべられるなんて、すごいことですよね」とアン。そして、自分の中に秘められていた「愛嬌と説得力」という長所を見出していくのです。

 

和菓子のアン (光文社文庫)

和菓子のアン (光文社文庫)

 
アンと青春 和菓子のアン (光文社文庫)

アンと青春 和菓子のアン (光文社文庫)

 
アンと愛情 和菓子のアン

アンと愛情 和菓子のアン