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『至高の営業』 - 売れる営業マンになるための「秘訣」とは? 

企業活動は、さまざまな分野から成り立っています。なかでも大きなウエイトを占めるのが営業部門です。その部門を担う「営業部員」の主な仕事は、顧客に商品を販売すること。しかし、その手法は極めて多様です。では、営業部員は、売り方をどのようにして学び、自分なりのスタイルを作っていくのか。営業部に配属された部員は、どのようにして成長していくのか。そのような課題を考えていく場合、参考にできる経済小説があるのか。そうした疑問に答えるため、「営業部員を扱った作品」を五回に分けて紹介していきます。

「営業部員を扱った作品」の第一弾は、杉山大二郎『至高の営業』(幻冬舎、2013年)です。主人公は、業績が低迷し、会社を辞めようかと悩んでいた入社四年目の営業マン。伝説的なトップセールスマンとの出会いによって、たった三ヶ月で大変身する姿が描写。悩める営業部員には、きっと参考になることでしょう。

 

[おもしろさ] すべては「変わりたい」という強い意志から始まる

営業部員の多くは、顧客に商品を売るためにさまざまな努力をしています。また、売れる営業マンになるための「秘策」を探し求め続けていることでしょう。そのための「秘策」はけっしてひとつではありません。トップセールスマンが十人いれば、答えは十通りあることでしょう。しかし、「これがないと先に進めない」と言える必須要件があります。それは、自分自身の問題点を潔く認めたうえで、それらと真正面から向き合う気持ちと、「変わりたい」「やり遂げたい」という強い意志にほかなりません。そして、次のステップとして、「商品を起点」とする考え方から「顧客を起点」とする考え方への転換があります。本書の魅力はズバリ、売れるセールスマンになるための「秘訣」のひとつひとつが、物語の展開という形で読者の心に届けられていくことです。

 

[あらすじ] 悩める営業マンに手を差し伸べたトップセールスマン

なかなか思うように業績をあげることができない入社四年目の営業マン・五十嵐卓也26歳。勤務先は、都内に本社を置く中堅のパソコン販売会社・ハピネスコンピュータです。希望して営業マンになったわけでもない。頑張っても、自分には大成する見込みはない。会社から与えられた商品をお客に売るだけの仕事なので、創造的なものは何もない。彼は、そのような気持ちでお客と接しています。やる気も失せ、会社を辞めようかと悩む日々です。そのようなとき、東京営業部城東営業所という、全国でも常に最下位の業績に甘んじている営業所の新しい所長として、伝説的なトップセールスマンの鈴木翔太が赴任してきます。どうせ自分を変えることなどできないと考えていた五十嵐は、鈴木からさまざまな秘策を授けられ、見る間に変わっていきます。

 

至高の営業

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