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『営業の悪魔』 - トップセールスマンは、こうやってガンガン売っている! 

「営業部員を扱った作品」の第二弾は、長谷川千波『営業の悪魔――「チキンハートでネガティブ思考のお前に何ができる?」』(祥伝社、2015年)です。「トップセールスマンはどうやってガンガン売っているのか」。そのノウハウを知ることができます。自らがトップセールスであったという著者がトップセールスの実態をビジネス書ではなく、小説・物語の形で書いた理由が、説明されています。それは、「トップセールスマンが綴る営業指南書は、立派な『心得』や、『仕事術』ばかりで、エピソードはちょっといい話的な『美談』のオンパレードになっているからです」。が、「トップセールスマンの自慢話など聞きたくない人でも、物語であれば楽しく受け入れられるのではないか」と考えたからなのです。

 

[おもしろさ] 「へー、このような売り方で攻めていくんだ!」

「営業部員を扱った作品」の第一弾となった『至高の営業』は、トップセールスマンが後輩にセールスの秘訣を指導するという内容の作品でした。ただ、上司・先輩から部下・後輩への適切な指導が常に行われるとは限りません。そもそも、当事者にあっては、あまりにも当たり前に行っていることなので、それを他人に教えたり、文章化したりすること自体にむずかしい場合もありえるのです。また、この本に登場する何人かのトップセールスのように、「一匹狼的な存在」「後進には自分のノウハウを教えない」「常識とは異なったやり方をしている」といったケースも多いからです。本の中には、教材、化粧品、コピー機、高額絵本などを扱う何人かのトップセールスマンが実際に商品を販売していく場面が登場します。「へー、このような売り方で攻めていくんだ」! それぞれの人物が実践するやり方自体が、とてもおもしろく、感心されられるのです。本書の特色は、多くの具体的なエピソードを紹介するなかで、営業スタイルの多様性を明らかにするとともに、「隠されがちな営業力」を浮き彫りにさせようとしている点です。

 

[あらすじ] おもしろさ満載のパワフルな営業活動の数々

営業代行会社MUGENグループに勤務する、入社三年目の営業マン・南原航介は、コピー複合機の販売に従事。実績を残せず、あせりの日々を過ごしていました。記憶力だけは自信があるものの、鈍感で、ビビリ屋、チキンハートの持ち主でした。ある日、本社の営業本部長の滝沢望から、トップ0.1%にランクされるセールスマンの営業現場に同行し、その秘密を探れという「特命」を受けることになります。しかし、彼らの営業スタイルは、南原の想像をはるかに超えるものでした。やがて、彼らに同行し、実際の営業活動に直に触れるなかで、南原自身にも大きな変化があらわれてきます。そして、最後のドンデン返しに向かって、おもしろさ満載のパワフルな営業活動の数々が披露されていくのです。

 

営業の悪魔――「チキンハートでネガティブ思考のお前に何ができる?」

営業の悪魔――「チキンハートでネガティブ思考のお前に何ができる?」