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『小説 ダメ営業マンのボクが企業参謀に変わるまで』 - 営業力向上のきっかけとなったある事情

「営業部員を扱った作品」の第五弾は、小関尚紀『小説 ダメ営業マンのボクが企業参謀に変わるまで』(東洋経済新聞社、2010年)です。好きになった同僚の女性に好かれたいという思いから、自分自身を磨きたいと考えた営業マン。「自分力」を向上させていく過程で、同時に戦略立案プロセスを学び、営業マンとして活躍できる資質を鍛え上げていきます。そのプロセスがコミカルなタッチで描写されています。

 

[おもしろさ] 「恋愛力」と「営業力」がともに向上する! 

主人公は、著者と同名の小関尚紀。大阪弁が抜けません。特に才能があるわけでもなく、あきらめが悪い、ほとんど中年のオッサンです。仕事に関しても、これまでは、たとえ間違った方向で進んできても、それが正しかったのかどうか、考えたことなどないという、ダメな営業マンだったのです。ある日のこと、そんな小関が変わろうと決意します。ただ、そのきっかけは、営業マンとして大成したいという理由ではなく、魅力的な異性の関心を引くためだったのです。変わるための段取りは、自己分析で「自分の強みと弱み」をしっかりと認識すること(SWOT分析)からスタート。次は、課題を明確にして、やりたいこと、やるべきこと、できることの絞り込み。そして、ビジョン・目標を達成するためのシナリオ・道筋を作成したうえで、アクションを起こしていきます。このようにして、「経営戦略のためのツール」を応用した「自分力向上ツール」を実践することで、営業マンとしての成長と、彼女に気に入られるための条件整備が同時に行われていったのです。この本をおもしろく読めるのは、「恋愛力」と「営業力」がともに向上していくという、そのような設定にあると言っても過言ではありません。

 

[あらすじ] ダメ営業マンを鍛え上げたコンサルと経営戦略ツール

大手菓子メーカー「キング☆スイーツ」に勤務する37歳の小関尚紀は、営業4部という窓際部門に追いやられても、反省することもなく、ただなんとなく毎日を過ごしています。ブサイクとデブで、およそモテない独身男性。同じ会社の社長秘書になった宮坂真央子(マオマオ)に恋をします。「マオマオにモテるように、ワシ変わりたいねん」と小関。東山照夫教授(大学時代の恩師であり、「キング☆スイーツ」と経営コンサルタント契約をしている人物)から「経営戦略ツール」をベースに開発された「自分力向上ツール」を習得するなかで、モテる男になることを決意。あわせて、営業マンとしての自分の能力開発を進めていくことになります。

 

小説 ダメ営業マンのボクが企業参謀に変わるまで

小説 ダメ営業マンのボクが企業参謀に変わるまで