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『プラチナタウン』 - 元商社マンの町長が挑む起死回生の町おこし

「地域の活性化を扱った作品」の第二弾は、楡周平『プラチナタウン』(祥伝社、2008年)。財政破綻寸前の田舎町の町長に就任した元商社マンが、「逆転の発想」で町の再生に挑む物語です。2012年にWOWOWで放映された連続ドラマW『プラチナタウン』の原作本。大泉洋さんや檀れいさんが出演されました。なお、楡周平和僑』(祥伝社、2015年)は、7年後の姿を描いた本書の続編。10年後、20年後を展望した「地域再生プラン」を描いた力作。あわせて、読まれることをおススメします。

 

[おもしろさ] 「年寄ばかりの町にしてしまう」という逆転の発想

財政破綻寸前の田舎町の再生というと、まず思いつくのは、役場の職員数を減らし、給料を下げ、行政サービスの縮小といった歳出のカットにつながるものばかり。過疎化や高齢化に対しては、定住の促進などで、若者たちを引き付ける施策が念頭に浮かびます。しかし、そうした対応策だけでは、いずれはジリ貧になってしまう可能性を拭い去ることはできません。では、いかなる処方箋がありえるのでしょうか? この本のおもしろさは、60歳以上が半数を超えているという町の実情を踏まえて、年寄りを減らすのではなく、むしろ「年寄ばかりの町にしてしまう」という「逆転の発想」をどのように実現させていくのかを明らかにしている点にあります。

 

[あらすじ] シルバーやゴールドの上を行く「プラチナタウン」

主人公は、総合商社の四井商事に勤務する山崎鉄郎。商社マンとして多忙な生活をしている彼に、中学時代の同級生のクマケンこと熊沢健二が宮城県の故郷・緑原町の町長になってくれと懇願します。「お願いだ。鉄ちゃん、あんだ、町長さなってけねえべが」と。緑原町は、人口が1万5000人を割り込み、めぼしい財政基盤はなく、150億円もの負債があります。しぶしぶながらも町長への就任を引き受けた山崎は、「年寄りは金を生む貴重な財産」と考え、「豊かな老後」を実現させるという画期的な地域再生プランを実施していくことに。「シルバーなんてありきたりなもんじゃない。ゴールドよりももっと価値のあるプラチナ。そう、まさにプラチナタウンですよここは」!

 

プラチナタウン (祥伝社文庫)

プラチナタウン (祥伝社文庫)

 
和僑 (祥伝社文庫)

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