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『ローカル線で行こう!』 - 鉄道を軸にした「地域の再生」

「地域の活性化を扱った作品」の第三弾は、真保裕一『ローカル線で行こう!』(講談社、2013年)。メインストーリーは、新たに社長に就任した女性が破産寸前のローカル線を再生するという話。しかし、その鉄道自体が地域経済の動脈です。そうした動脈を維持できてこそ、地域の活性化が可能になります。また、鉄道の活性化は、沿線の住人と一体になってこそ、実現されます。その意味で、鉄道を軸にした「地域の再生」のひとつのパターンと考えることができる作品になっています。

 

[おもしろさ] 「お金がないなら、知恵を出すべき」

崖っぷちにある組織には、潤沢な資金があるわけではありません。しかし、お金がなくても、知恵を働かせることができます。「お金がないなら、知恵を出すべき」と断言する女性社長のもと、鉄道の再生が実施されていきます。ところが、あきらめを引きずった社員たちのやる気のなさ・無欲さ・淡白さ、けっして協力的とは言えない経営陣、不可解な妨害工作など、立ちはだかる壁は極めて高いものでした。本書のおもしろさは、そのような悪材料にもまけずに、再生のリーダーシップを取り続ける女性社長のバイタリティにあります。実現される鉄道の活性化策には、日本全国のローカル線にも応用できるようなアイデアの数々が含まれています。

 

[あらすじ] 鉄道がなくなると、地域経済も危機に瀕することに

第三セクターが運営する、宮城県の架空のローカル線「もりはら鉄道」は、まさに破産寸前。その新社長に、東北新幹線のカリスマ・アテンダント(接客係)であった31歳の篠原亜佐美が就任します。鉄道がなくなると、過疎化が進み、駅前の商店街は壊滅する。そして、クルマがないと生活できなくなる人々が増加する。その結果、利便性を求めて、ますます多くの人が都会に向かっていく。そうした流れをなんとか食い止めたい。そのように考える篠原社長は、もりはら鉄道を活性化させるべく、地域の住民を巻き込んでさまざまな施策を打ち出します。

 

ローカル線で行こう! (講談社文庫)

ローカル線で行こう! (講談社文庫)