「災害を扱った作品」の第三弾は、石黒耀『震災列島』(講談社文庫、2010年)。最近の研究データに基づいて、もし東海地震が起きれば、いかなる事態が生じるのかを予測した警告小説です。東海地震の渦中、娘の仇を討つため、復讐計画を練り上げ、実行する男性の姿が追跡されています。
[おもしろさ] 四つのプレートに包囲された日本列島の危うさ
地球は、殻付きの半熟卵のようなもので、表面はプレートと呼ばれる板状岩盤で覆われています。そして、日本列島では、北の北米プレート、東の太平洋プレート、南のフィリピンプレート、西のユーラシアプレートという四つのプレートがひしめき合っています。地震が多発するのは、そうした地質状況を反映しているためなのです。実際のところ、世界で起こるマグニチュード6以上の地震の10%、1994年以降に限れば、実に21%が日本(国土面積ではわずか0.25%)で起こっています。「地震の巣の上に、こんな過密都市を作るべきではない。こんな不安定な地盤の国に、原発を稼働させるべきではない」。本書の特色は、最新の研究データに基づいて、東海地震が引き起こす破局的なパニックの様子を予測した警告小説に仕立て上げられていることです。
[あらすじ] 大震災の発生とともに起動する復讐劇
名古屋で地質会社(地面に穴を掘る「ボーリング屋」)を営んでいる46歳の明石真人。東海地震と東南海地震が連続して起こることを予測します。彼の近くに拠点を構えた不動産会社「阿布里住宅」社長の阿布里満は、大地震が起こったとき、その混乱に乗じて周辺地域の建物に火をつけ、住民たちを一掃することを計画。反対する真人の動きを封じるために、娘の友紀に暴行を加え、死に追いやってしまうのです。復讐を誓った彼は、父親の善藏と一緒に、地震による大津波を利用して娘の仇を討つという計画を練り上げます。数ケ月後、ついに東海地震が発生。復讐劇の幕が開かれます。東海地震震源域のど真ん中に位置している浜岡原発の炉心溶解(メルトダウン)など、地震に伴うさまざまな災厄が人々に襲いかかることに。