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『B勘あり!』 - ズバリ! 税務調査の実態とは? 

「税金を扱った作品」の第二弾は、飯田真弓『B勘あり!』(日本経済新聞出版社、2015年)。B勘とは、裏帳簿、隠し口座などのこと。26年間国税調査官として勤務し、現在は税理士として活動する著者による小説。舞台は大阪。かつて国税調査官であったがゆえの内容に仕立て上げられています。前回紹介した『トッカン』が税務署の徴収部門を扱っていたのに対して、本書の対象は調査部門になります。

 

[おもしろさ] 国税局や税務署の仕組みや専門用語が解説

この本の特色は、確定申告されたものが正しいかどうかを見極める税務署の税務調査において、どこに目を付け、なにを調べ、どのようにして納税者の「ウソや不正」を見破っていくのかという点をリアルに描写した点にほかなりません。隠されていたことを国税調査官が暴露していく! その様子に、読者は驚くことでしょう。物語の進行のなかで、税理士の業務に加え、国税局・税務署の仕組みや専門用語が解説されていくのも、本書のもうひとつの特色になっています。

 

[あらすじ] 納税者・税理士・国税調査官三者三様の目線

税務署は、まず調査の対象となる納税者に対して、調査の日時を打診します。その際、契約している税理士事務所があれば、税理士がその場に立ち会ったり、事前の打ち合わせや助言を行ったりすることになります。物語では、①税務調査の対象となった事業所の税理士として関わることになる新米税理士・岩崎美咲や同じ難波税理士事務所の番頭格の事務員・太田幸雄、②税務調査の当事者である国税調査官、③調査の対象となる納税者という三者の目線で、四つの事例に即した税務調査の実態が明らかにされていきます。

 

B勘あり!

B勘あり!