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『メガネと放蕩娘』- 起爆剤になった商店主と大学の教員・学生のコラボ! 

「商店街の活性化を扱った作品」の第二弾は、山内マリコ『メガネと放蕩娘』(文藝春秋、2017年)。まじめで堅実な老舗書店の「メガネ」娘と10年ぶりに地元に帰ってきた「放蕩娘」が、地元の大学教員・学生と協力しながら、あの手この手の活性策を打ち出します。「活性化を阻む要因」「円滑な活性化に不可欠な条件」が示されています。商店街の活性化を総論的に理解できる本でもあります。

 

[おもしろさ] 活性化を阻む要因と円滑に進めるための条件とは? 

この本の特色は、ストーリーの展開を楽しみながら、「商店街の活性化を阻む要因」と「円滑な活性化のために不可欠な条件」を掘り下げていること。前者に関しては、本気でこのままでいいと思っている人たちの存在、トキメキや喜びをつくられていない現実、買いたいと思わせる商品が販売されていない実情、駐車場の不足、「行政がカネを出すのが当たり前って感覚」で、自助努力する気がない人たち、よそ者には店・家を貸さない商店街の住民、グチばかりでアクションを起こせない人たち、商店街を盛り上げようとするとそれを迷惑に思う人たちなどが挙げられています。そして、後者については、第一に、「商店街という『場所』(アーケードの内)を活性化するのではなく、商店街に関わりの深い『人』の交流を活性化させる」という発想、第二に、商店街の中だけではなく、(裏通りや近隣の住宅地など)周辺の地域と一体となって活性化を図っていく姿勢、第三に、イベントでは、消費行動を変えることはできないと認識することが指摘されています。

 

[あらすじ] キーパーソンは「よそ者・バカ者・若者の三者

かつては県下で一番の繁華街として栄えた商店街の老舗書店「ウチダ書店」の長女である33歳のタカコ(まじめで堅実な「メガネ」娘)と、次女である28歳のショーコ(10年ぶりに地元に帰ってきた放蕩娘)。その二人が、地元国立大学の専任講師である原まゆみ、および彼女のゼミ生のサポートを受けつつ、「街を変えるキーパーソンでもあるよそ者・バカ者・若者の三者」をうまく結集させ、シャッター通りと化した商店街の活性化のために、行動を開始します。ファッションショーのイベント、商店街シェアハウス化計画、ウチダ書店のテナント募集、カンスリーショップ「フリーポケット」の展開など。果たして、その帰結とは? 

 

メガネと放蕩娘 (文春e-book)

メガネと放蕩娘 (文春e-book)