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『小説 企業内弁護士』 - 顧問弁護士とはまた異なった役割を果たします! 

「企業のリスク対応力を扱った作品」の第三弾は、中根敏勝『小説 企業内弁護士』(法学書院、2011年)。企業・団体が弁護士と契約し、事あるときに相談に乗ってもらうという「顧問弁護士」とは異なって、ある特定の企業・団体だけのために弁護士業務を行う「インハウスロイヤー(組織内弁護士)」の具体的な案件処理の過程・実態が描写されています。

 

[おもしろさ] 法律による理論武装を事前に行うことで

企業や個人の行動を大きく左右するものに、法律の存在があります。知らぬ間に、それに触れ、トラブル・不祥事に発展する場合も少なくありません。したがって、取り組んでいる案件が法律に触れるかどうか、あるいは触れないようにするにはどうすればよいのかといったことを、事前に知っておくことは、ビジネス活動に大きく役立ちます。そのためには、身近に、しかも自分と同じ立場に立って、法律上の問題に関してアドバイスをもらえる人や部署が重要な意味を持つことになります。インハウスロイヤーの存在は、そうした脈絡のなかでクローズアップされてきます。本書の魅力は、その重要性にもかかわらず、さほど普及せず、しかも一般にはあまり知られていない「企業内弁護士」の日常業務をリアルに描いている点にほかなりません。

 

[あらすじ] 企業内弁護士がいると、こんなに便利に

大学卒業後女子総合職で開福銀行に入行し、数年間通常の銀行員として勤務するかたわら、司法試験をめざした主人公の茜。合格後、一旦、同行を退職するのですが、弁護士資格を取得したのち、社内弁護士として復職します。社内での相談業務、法務部へのアドバイス、顧問弁護士と社員とのつなぎ、会社側リスクの軽減、セクハラガイドラインの原案策定、訴訟に関する助言と指導、法務研修の実施など、多種多様な領域で大きな役割を果たしていきます。

 

小説 企業内弁護士―もし弁護士が企業で働いたら

小説 企業内弁護士―もし弁護士が企業で働いたら

  • 作者:中根 敏勝
  • 発売日: 2011/09/01
  • メディア: 単行本