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『ラーメン屋の看板娘が経営コンサルタントと手を組んだら』 - ラーメン屋の再生に必要なものは? 

「飲食店を扱った作品」の第三弾は、木村康宏『ラーメン屋の看板娘が経営コンサルタントと手を組んだら』(幻冬舎、2011年)。つぶれかけたラーメン屋が経営のプロのアドバイスによってよみがえる話。ラーメン屋をほかの業態に置き換えてみると、より広く飲食業全般にも応用できるコンテンツになっています。

 

[おもしろさ] 危機の要因とそこから脱出するための条件

本書の特色は、第一に崖っぷちのラーメン屋には、どのような特徴があるのか、第二にそれの店を再生するには、どのような方策があるのかが提示されている点にあります。第一に関しては、「かつての成功体験に固執しすぎる」「経済環境や国の政策のせいにする」「専門家やコンサルタントのアドバイスに耳を貸さない」などが挙げられます。第二については、「短所是正では売り上げは上がらないし成功できない。物事を成功に導くのは、長所伸展なのだ」「この地域で圧倒的一番のものを創る」「ここにきてうまかったという店よりも、ここで食べてよかったという店を作る」などを指摘できるでしょう。読みどころは、そうした点がストーリー展開のなかで具現化されていることにあります。

 

[あらすじ] 頑固一徹の店主も徐々に変化! 

東京都心部にほど近いベットタウンにある創業24年の大力屋。かつては繁盛したものの、いまではすっかり閑古鳥が鳴くほどに。商店街は、10店舗以上のラーメン屋がひしめくラーメンの激戦区」です。店主の山本大二郎(48歳)は職人肌で、頑固一徹。一人娘の春香が大学の授業で出会った経営コンサルタント澤村京介の助言を求めるも、それを受け入れる寛容さを持っていません。要するに、これまでのやり方を否定されるのが怖いのです。「どうせ客なんて俺の味を理解できないんだから」といった気持ちさえ持っているのです。確かにおいしい。でも、単においしいというだけでは、商品として売れないのも現実。同業者の集まりでは、「景気が悪い」「国の政策が悪い」といったグチばかりです。このままでは大力屋は、完全に沈んでしまうことに! しかし、娘の情熱・愛情とコンサルタントの助言が、頑固親父に風穴を開けていきます。