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『ヒールをぬいでラーメンを』 - 起業への起爆剤は「憎しみ」! 

「起業を扱った作品」の第三弾は、栗山圭介『ヒールをぬいでラーメンを』(角川春樹事務所、2019年)。大手IT企業に勤めていた門坂有希は、突然のクビ宣告で茫然自失に。でも、自分を捨てた社長を見返すべく、ラーメン店を起業します。構想から開店までの全過程がリアルに再現されています。前の会社・社長に対する「見返し」「憎しみ」が起業の動機になったケースと言えるでしょう。

 

[おもしろさ] 構想から開店までの流れが! 

この本の魅力は、主人公がラーメン屋を構想し、開店に向けの準備を行い、ひとつずつ課題を克服していくプロセスを満喫できる点にあります。具体的なプロセスは以下の通りです。①リサーチを開始→②ラーメンのみならず、うどんやそばの作り方といった麺づくりと店舗経営のノウハウ(店舗設計のコンセプト、メニュー構成、人材の確保、資金調達)などについて総合的に学べる教育機関「大江戸麺づくり学校」への入学→③ラーメン店「花水木」での「修業」→④店舗探し→⑤店のコンセプトの明確化(スタッフは女性オンリー、内装はカフェのイメージで)→⑥「らーめんShizuku」のオープン。

 

[あらすじ] 「くそーっ、復讐してやる、見返してやる」

大手IT企業「コムネル」に勤める34歳の門坂有希。短大卒業後に人材派遣会社で4年間勤務したあと、これから立ち上がる会社に魅力を感じ、同社に就職しました。社長の萩原英人、副社長の玉木と根本は大学の同級生。まだ学生サークルの雰囲気を漂わせたような会社でした。入社してから10年が経過し、コムネルは、フリマとネットオークションを運営する会社としては、国内トップクラスの業績を上げ、近々、東証二部に上場することも決まっていました。6年前から社長秘書課に配属された彼女は、3年前からは社長とは個人的にも付き合っていたのです。ところが、上場に際しての社長の身辺整理という口実の下、社長との交際や会社経費の私的流用が暴露されたことで、有希は、社長の仕掛けた罠に嵌り、退職を余儀なくされます。愛する会社と社長に裏切られた有希。やがて萩原がグラビアアイドルから転身した女優と結婚することを知ることに。そして、コムネルが新規事業として、「今までにないお洒落なラーメンのチェーン店」(のちに「らーめん旬華」と命名)を作ることを発表。その報に接した彼女は、「くそーっ、復讐してやりたい。口止め料としの1500万円を軍資金に充ててやる」と、オンリーワンでナンバーワンのラーメン店を作ることを決意。「憎しみがやる気に変わる。何が何でもラーメン屋だ。絶対に見返してやる」! こうして新たな有希の挑戦が始まったのです。しかし、たどり着いた結末は、意外なものだったのです! 

 

ヒールをぬいでラーメンを

ヒールをぬいでラーメンを

  • 作者:栗山圭介
  • 発売日: 2019/09/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)