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『ハタラクオトメ』 - 仕事の9割は虚しいが、残りの1割には喜びも

「働く女性を扱った作品」の第四弾は、桂望実『ハタラクオトメ』(幻冬舎、2011年)です。働く女性の目線で、男性優位の会社の内実を見ていくと、不条理に満ち溢れていることがよくわかります。しかし、たとえ仕事の9割は虚しいものだとしても、残りの1割には、喜びや楽しさが詰まっています。そのことを発見するまでの主人公の道のりがフォローされています。女性も責任のあるポジションを任されれば、しっかり活躍できることが示されています。

 

[おもしろさ] 社内の常識や慣行も女性の目線から見ると! 

本書のおもしろさは、男性優位で運営されてきた会社のなかでの「常識や慣行」の多くがいかに無駄で、女性たちにはネガティブなものとして受け止められているのかを示している点にあります。例えば、「精神論ばっかりのお説教を垂れる部長」、「階層にこだわり、従順なのがいい部下と、上も下も思っている社員たち」。「女性が元気に活躍できる企業が生き残っていく」と言葉の上では言えても、女性が働きやすい環境づくりとはほど遠い実情。毎日デスクワークばかりで、市場をまったく見ていない取締役たちの発言のピンボケぶり。

 

[あらすじ] 女性も責任のあるポジションを任されれば! 

中堅の腕時計メーカー「日高株式会社」(創業55年、社員数500名)は、開発力も技術力も他社と比べて特段優れているとは言えず、同社の商品には、オリジナリティが欠けています。100キロの体形で食いしん坊のOLゆえ、「ごっつぁん」という愛称で呼ばれる北島真也子。彼女が同社に就職したのは、5年前のこと。愛されるキャラクターの持ち主で、「癒しの存在」でもあるごっつぁんの周囲には、自然と人が集まってくるようです。総務部人事課に異動した彼女は、「女性だけのプロジェクトチーム」のリーダーに就任。新製品の開発が目的で、メンバーは全部で6名。「どうせまたポシャりますよ」と勘ぐっていたので、取り組み方もいまいち真剣味が希薄です。その場の思いつきで出した企画のうち、三つの案が取締役会で了承され、二つのサンプルが展示会に出品されたのですが、結局、商品化には至りませんでした。しかし、再度、プロジェクトチームが復活。商品開発の企画を出すことを要請されます。真剣に取り組もうとするごっつぁんの心のなかに、生まれて初めてのワクワク感が生まれてきます。「夢を掴もうと必死でなにかするって、いいよね」という気持ちをほかのメンバーとも共有。根回しにも挑戦します。さて、今回はどのような展開が待ち受けているのでしょうか? 

 

ハタラクオトメ (幻冬舎文庫)

ハタラクオトメ (幻冬舎文庫)