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『編集ガール!』 - 「ずぶの素人」がファッション誌の編集長に

「編集者を扱った作品」の第二弾は、五十嵐貴久『編集ガール!』(祥伝社、2012年)。いきなり女性ファッション誌の編集長に抜擢されたのは、編集業務をまったく経験していない「すぶの素人」。経理部勤務であった女性が変身し、リーダーシップを発揮する様子が描かれています。

 

[おもしろさ] 経験者は皆、先入観にとらわれすぎる! 

この本のおもしろさは、編集未経験の女性主人公が、「素人さ」を武器に、創刊されたばかりの女性ファッション誌の編集長として活躍するところにあります。「編集者には編集者なりの常識ってものがある。経験が長いほど、その常識にとらわれがちだ。だけど、みんな未経験。逆に言えばワクがないってことになる。先入観にとらわれず、新しいものを生み出せるチャンスなんだ」。リーダーシップの発揮の仕方のみならず、彼氏・結婚・妊娠とバランスを取りながら仕事に取り組む姿勢についても考えさせられる作品です。

 

[あらすじ] 原動力は「女性目線と直感」! 

ワンマン社長が君臨する出版社の永美社(社員数は約300名)。27歳の高沢久美子は、同社の経理部に勤務して5年目になります。ほとんど思いつきで書いた、通販雑誌に関する企画書(通販とウェブとマガジンの合体)が長沼社長の目に留まり、急きょ立ち上げられた女性ファッション誌の編集長に就任することに。大抜擢には違いなかったものの、ワンマンが故の「無茶な人事」と周囲には受け止められます。部下もほぼ「ど素人」の集団。しかも、ただ一人の編集経験者である加藤学は、久美子の彼という関係。なにをどうすればよいのかまったくわからず、途方に暮れる久美子。が、その彼女がやがて名実ともに一人前の編集長になっていきます。その原動力となったのは、「女性目線と直観」! 

 

編集ガール! (祥伝社文庫)

編集ガール! (祥伝社文庫)