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『ともにがんばりましょう』 - あなたが労働組合の執行部員になるときに

労働組合を扱った作品」の第三弾は、塩田武士『ともにがんばりましょう』(講談社、2012年)。組合活動には、まったく関心がなかった新聞記者が労働組合の教育宣伝部長に就任。そのときの経験が具体的に描写されています。笑って熱くなれる! 組合の最前線を楽しく学べる作品です。

 

[おもしろさ] 労働組合の最前線が楽しく学べる

労働組合と会社の経営陣とのやりとりや駆け引き、組合活動の日常、組合内部での意見のやり取り、労使間における信頼関係の持ち方など、いわば「組合の最前線を楽しく学べる教科書」のような役割を果たしてくれる作品です。また、購読者数の伸び悩み、広告の減少、増税、設備投資、電子新聞への模索など、大阪の地方新聞社の課題や実態を垣間見ることができます。「敵は倒すためにあるんやない。歩み寄るためや」。

 

[あらすじ] あがり症でマイナス思考の人間が! 

大阪にある上方新聞社の編集局社会部に勤める28歳の武井涼は、入社6年目の記者です。ある日、労働組合の次期委員長になる寺内隆信から教宣部長(機関紙である組合ニュースの編集に当たる)への就任を強引に要請されます。組合員にならないと上方新聞の社員にはなれないので、組合費を払っているだけ。組合にはまったく無関心だった涼。彼の性格は、「度が過ぎるほどのあがり症」「筋金入りのマイナス思考」。したがって、労使の交渉では、なかなか発言できません。しかし、組合活動を通して、寺内のいう人物を「初めて、人について行きたい」と思うようになっていきます。あがり症でマイナス思考の彼が、どのように役割を全うしていくのでしょうか? 

 

ともにがんばりましょう (講談社文庫)

ともにがんばりましょう (講談社文庫)

  • 作者:塩田 武士
  • 発売日: 2017/03/15
  • メディア: 文庫