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『その名もエスペランサ』 - 「派遣のプロ」をめざすヒロインの「お仕事生活」

非正規労働者を扱った作品」の第三弾は、徳永圭『その名もエスペランサ』(新潮社、2014年)。「自分は派遣という形が性に合っている」と考えているヒロインの派遣社員・本郷苑子の心の葛藤や仕事に対する姿勢が浮き彫りにされています。

 

[おもしろさ] 派遣のあるべき姿とは? 

「スポットライトを浴びることに興味はない。能動的にアクションを起こすよりも、社員から指示された仕事をていねいに、迅速にミスなくこなす。そのほうが裏方志向の自分にはずっとやりがいがある」。29歳の本郷苑子の考えです。と同時に、「派遣のプロ」をめざしています。「どんな派遣先でも、確実に仕事をこなす。それが派遣のあるべき姿というものじゃないか」。そんなヒロインのお仕事生活に関する「日常」が鮮明にされていきます。

 

[あらすじ] 特に興味もなかった自動車の生産現場での気づき

前の職場で受けた心の傷を抱えた苑子。今度の職場は、三重県風切市に本社と工場を有している鈴並工業という名の自動車部品メーカー。6年以上の経験を有する英文事務のはずが、自動車の部品工場での部品係とは! スペイン向けに新型エンジンを供給するという「エスペランサ・プロジェクト」を推進するグループに加えられることに。作業服で作業する苑子にも、「希望」(エスペランス)は生まれるのか? 

 

その名もエスペランサ

その名もエスペランサ