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【編集・解説】 『明日はきっと』

2022年1月21日、角川文庫から『明日はきっと-お仕事小説アンソロジー』が出版されました。収録されている作品は、新野剛志さんの「笑って、笑って」、沢村凛さんの「部下の迷い」、宮木あや子さんの「校閲ガール!?」、久保寺健彦さんの「仕事の仕事」、坂木司さんの「グッドバイからはじめよう」。舞台は、旅行会社、労働基準監督署、出版社、ハローワーク、クリーニング店と異なっています。しかし、いずれも、それぞれの仕事の真髄・醍醐味、働いている人の喜びや苦労、仕事の本質が見事に描かれた作品ばかりです。

五つの作品で取り上げられているのは、働いている人であれば、だれしもが遭遇する「やる気の喪失」「悩み」「迷い」「気苦労」など。具体的には、①希望とは異なる仕事への異動、②部下との距離感についての悩み、③けっしておもしろいとは思われない部署への配属、④「仕事を探す人」の身勝手さに対する困惑、⑤家業のクリーニング店をバイト感覚で行っている大学生の進路に対する迷い・不安です。では、そのような局面と、どのように対峙していけば良いのでしょうか? そのようなとき、是非とも参考にしてほしいのが、本書なのです。なぜならば、それらの作品にあっては、「悩み」や「迷い」や「不安」の向こうに「必ずある希望」というものもまた、示唆されているからです。

世の中には、「おもしろい仕事」と「おもしろくない仕事」の区別はない。しかし、「おもしろく仕事をしている人」と「つまらなそうに仕事をしている人」の違いはあるかもしれない……。そうした書き出しで始まる私の解説文。もし、おもしろく仕事をするためのスイッチのようなものがあるとするならば、それをオンの状態に変えうるかもしれない。そんな仕事小説の可能性について触れられています。また、収録されている作品をより広い視野のもとで位置づけるために、①お仕事小説とはなにか、②どのような効用があるのか、③いつ登場し、流行するようになったのはなぜかといった、いわば「お仕事小説のキホン」についても説明されています。