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『ただいま家事見習い中』 - 家事代行会社って? 

「家事を扱った作品」の第二弾は、鯨統一郎『ただいま家事見習い中-ハウスワーク代行・亜美の日記』(中公文庫、2018年)。家政婦のように一日単位ではなく、一時間単位で家事を請け負う家事代行会社。個人宅と家事代行会社が契約を結ぶので、従業員は会社から派遣される形になります。そうした家事代行会社でアルバイトをすることになった大学生が主人公。家事代行会社がどのように運営されているのか? どのようなときに人は家事代行会社に依頼するのか? そうした疑問に答えてくれる作品です。

 

[おもしろさ] 逃げないで、誠実な気持ちで真摯に向き合う

本書の特色は、家事代行会社でアルバイトをするようになった樋口亜美の目線から、その仕事の心構え、トラブルに見舞われたときの姿勢・対処方法が描かれている点にあります。苦情を言ってきた人から逃げないで、誠実な気持ちで真摯に向き合うことの大切さが強調されています。

 

[あらすじ] 初仕事に遅刻したのですが…

両親が交通事故でなくなり、東京は吉祥寺にある小さなアパートで祖母と二人で暮らしている樋口亜美20歳は大学生二年生。バイト先のコンビニが閉店になり、生活費と学費をねん出するため、新しいバイト先を探す必要に迫られます。高収入を得るために、スナックで働こうとするのですが、ひょんなことから家事代行会社「エンジェルハンド」でアルバイトをすることになります。社長の竹脇カンナ34歳から、その会社で働く際の心構えを伝えられます。「うちは、あくまで家事の代行。その家の人が普段やっている家事を代行するだけ……。だから、その家にある掃除機や雑巾を使って掃除をすればいいの」。初仕事は犬の散歩。当日、遅刻をしてしまったものの、誠実な人柄から相手の信頼を得るとり、事なきを得ることに。しかし、亜美が散歩させた「犬が近所の子供にかみついた」という苦情が寄せられます。しかも、「犬の散歩を請け負った会社を裁判所に訴える」という話まで浮上。存亡の危機に陥るエンジェルハンド! 身に覚えがない亜美はどのように対処するのか? 裏表紙に記されているように、「派遣先で起こるトラブルに、亜美の鋭い勘が冴えわたる!」という展開が待ち受けています。