「農村を扱った作品」の第二弾は、上野遊『農村ガール!』(メディアワークス文庫、2018年)です。レストランに食材を供給するという大手企業「月見食品」。同社にあこがれ、就職できたことで、大喜びした大神 華。ところが、赴任先は秋田の山奥にある営業所でした。そこで、華に期待された業務とは、ハンターになること、すなわち農畜産物に被害を及ぼす害獣を駆除するというものでした。想像すらできなかった任務に対して、華は、負けん気の強さという持ち前の特性を発揮していきます。
[おもしろさ] 新たな仕事と慣れない農村生活に順応するプロセス
本書のおもしろさは、害獣駆除という仕事をどのような経緯を経てものにし、ハンターとしての覚悟を持つようになっていくのか、そして、慣れない山奥の農村での生活にいかにして順応していくのかというプロセスを描いている点にあります。初心者講習→射撃教習→所持申請→銃の購入という、銃を所持するまでの段取りをクリアし、狩猟免許が出るまでの過程、害獣とはいえ生き物を殺すことに対するわだかまり、害獣と農家・ハンターとのバトルなど、興味津々で読んでいけるでしょう。また、IT化が著しく進展する最近の農家の「意外な未来感」にも言及されています。
[あらすじ] 「罠を仕掛けたり、鉄砲持って鹿や猪をズドンしたり」
月見食品秋田営業所に赴任した大神華は、熊に襲われたところ、熊のような大男である男性に助けられます。のちに、同じ職場で華の指導役となる本城猛であることが判明するのですが、イケメンではあるものの、ともかく不愛想。悪態をつくような話しぶりに、華は初日からうんざりさせられることになります。しかも、所長から打診された仕事は、「害獣駆除」というきわめて特殊なお仕事。「農作物に被害を及ぼす動物の駆除。罠を仕掛けたり、鉄砲持って鹿や猪をズドンしたり」するもの。月見食品は、「全国各地の農家さんから買い集めた肉や野菜を、外食産業へと販売」するのがお仕事。しかし、野生動物による被害が爆増中しており、その駆除は、最優先課題のひとつになっているわけです。所長の打診に対して、猛は言いました。「考える必要はないぞ。どうせ無理だ。山の仕事はお前みたいな東京者の、しかも女に務まるものじゃない。半端な気持ちでやって事故でも起こされたらいい迷惑だ」と。見下されていると感じた華は、できませんとは言いにくかったのでしょうね。「やってやりますよ、害獣駆除! 矢でも鉄砲でも持ってこい!」と言い放ったのです。