組織のリーダーたる者は、いかなるときでも、そのより良き未来を求めて努力するべき存在であってほしいものです。とはいえ、現状を大きく変える政策・方針を提示し、実行に移すのは、必ずしも容易なことではありません。とりわけ、ぬるま湯にどっぷりつかり、対処療法的なやり方ばかりの追い続けてきたリーダーたちは、たとえ組織の根幹を揺るがすような危機に直面したとしても、有効な処方箋を書くことも、実行に移すこともできないまま、立ち往生してしまうことになります。では、深刻な危機に陥った状況を打開するには、リーダーたちには、どういった考え方・行動が求められるのでしょうか? 今回は、「常識では考えにくい、摩訶不思議な内閣および内閣総理大臣」を登場させることで、そのような課題について考えることができる三つの作品を紹介したいと思います。「摩訶不思議な内閣を扱った作品」の第一弾は、眞邊明人『もしも徳川家康が総理大臣になったら』(サンマーク出版、2021年)。新型コロナウイルスによる感染拡大で危機に陥った日本政府。「AIとホログラム」で偉人たちを復活させ、徳川家康を首班とする最強内閣を誕生させます。家康をはじめ、織田信長、大久保利通、豊臣秀吉、徳川綱吉、足利義光、坂本龍馬といった、歴史上の大人物たちによる内閣は、どのようなアクションを見せることになるのでしょうか? 「誰もが、飢えることも、戦の危険もない。自由と平等を謳歌できる。過去の時代と比べればまさに天国のような社会だ」。しかし、歴史上の人物たちの目に写る政治家たちは、あまりにも軽く、無責任な存在だったのです。なにしろ、彼らはあらゆる局面で、いわば「命を懸けて」決断し、行動するという経験をしたことがない人たちばかりだからです。2024年7月26日に公開「もしも徳川家康が総理大臣になったら」。浜辺美波さん主演、赤楚衛二さん出演の原作本。
[おもしろさ] 軽くて、無責任な現代の政治家!
「国民は政治に不信を抱き、政治家は選挙に通るために国民に媚を売り、『国民のため』と耳ざわりのいい政策をその場しのぎのように打ち出し、国家百年の大計のような勇気ある政治決断を先送りし続けてきました」。これまでのやり方を続けていては、そのような現状を打破することはできず、直面する危機に立ち向かうことができません。では、どうすればよいのでしょうか? 本書の魅力は、第一に、どのようにして、そうした問題に真正面から向き合い、解決策を実践していくべきかを、思いきったフィクションの形で提起している点。第二に、過去の偉人たちには、現在の日本がどのように映っているのかを浮き彫りにしている点にあります。「政治に関わる者たちのどうしようもない軽さ……。思いつきのような言葉を吐き、それを平気で反故にする…。意思決定者も実行者も皆、無責任」。
[あらすじ] 反対を恐れない決断力と実行力
2020年、新型コロナウイルスによる感染症が大流行し、国民の外出や経済活動は大きく制限。「持病を抱えていた総理大臣自らが感染し、死亡。前代未聞の事態に、国内に政治に対する不信感が充満し、日本はかつてない混乱の極みに達した」のです。そこで、政府は、秘密裏に画策していたAIと最新ホログラム技術で偉人たちを復活させ、最強内閣をつくる計画を発動させます。そんな内閣に対する国民の反応は、当初、非常に懐疑的でした。ところが、いち早くロックダウンを実施。全国民に一人当たり50万円の給付金を10日以内に配布したあと、リモート国会、歌舞伎町再編計画、リモート万博、令和版の「楽市楽座」など、前例のない諸政策を矢継ぎ早に実施。そうなると、国民の評価は一変! 反対を恐れない決断力と実行力に、人々が歓喜するようになっていくのです。