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『コード・ブルー』 - 「ドクターヘリ」と「フライトドクター」

「研修医」を扱った作品の第二弾は、林宏司(脚本)、沢村光彦(ノベライズ)『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』(扶桑社文庫、2017年)です。どのような患者でも、必要とされるときは必ず行く。絶対に逃げない。「それがドクターヘリなんだ!」。大学付属病院の救命救急センターに配属された四名のフライトドクター・フェローの葛藤・活躍・苦悩・達成感・成長プロセスが描かれています。2008年7月3日~9月11日にフジテレビ系列で放映されたドラマ『コード・ブルー』(出演は山下智久さん、新垣結衣さん、戸田恵梨香さん、比嘉愛未さん、浅利陽介さん)ファースト・シーズンのシナリオをもとにノベライズされたもの。『コード・ブルー』は、サード・シーズンまで制作。そのほかにも、劇場版(2018年7月27日公開)や特別編などが公開・放映されています。

 

[おもしろさ] 重い患者 VS 経験が浅いフライトドクターの候補者たち

コード・ブルー」とは、心肺停止や意識喪失といった緊急事態が発生した時に、医師や看護師などの医療スタッフを迅速に集結させるための緊急コールのことです。したがって、ここに登場する患者のほとんどすべては、生死の境をさまよう重症者ばかりなのです。それだけではありません。ドクターヘリは、救急車による搬送が困難な病人や負傷者にとって、最後の頼みの綱とも言える役割を果たす存在です。本書のおもしろさは、そんな重い患者たちに、まだ医師としての経験の浅い研修医・フェローたちがいかに悪戦苦闘するのか、どのように患者と向き合うのかというところをドラマティックに描き出している点にあります。

 

[あらすじ] フライトドクターをめざす四人:それぞれの試練

翔陽大学附属北部病院(翔北病院)の救命緊急センターが運営するドクターヘリに搭乗するのは、操縦士を除けば、医師(フライトドクター)と看護師(フライトナース)の二名。物語は、藍沢耕作、白石恵、緋山美帆子、藤川一男という四人のフライトドクター候補生が着任するところから始まります。いずれも、ほかのER(緊急救命室)勤務の経験者。彼らは皆、一般病棟、集中治療室、準集中治療室、ヘリ担当のすべてをこなすことになります。ただ、ドクターヘリに乗るのは、けっして簡単なことではありません。救命医療の要となるドクターヘリに乗れるドクターを育てるのが使命と考えている、救命救急部長の田所良昭は、「フェローをなるべくヘリに乗せてやってほしい」と、四人の指導医となる黒田脩二に言います。それに対して、「腕のない奴を乗せるわけにはいかない」というのが、黒田の答え。実のところ、昨年は、ヘリに搭乗できたフェローはひとりもいなかったのです。果たして、そんな状況下で、彼らは、フライトドクターになることができるのでしょうか? それぞれにユニークな個性を有する彼らがたどる道とは?