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『看守の流儀』 - 刑務官の場合

「お仕事いろいろ(3)」の第三弾は、城山真一『看守の流儀』(宝島社文庫、2022年)。舞台は金沢にある加賀刑務所。ベールに包まれ、なかなか知ることがむずかしい刑務所の内実がリアルに描かれた秀作。所収されている五つの短編から、受刑者にとって「更生の最後の砦」でもある刑務所という組織、刑務官(看守)の仕事、受刑者との交流・人間関係、受刑者同士の関係、家族との葛藤などが理解できる連作ミステリー。2025年6月21日にテレビ朝日系列で放映されたドラマプレミアム『看守の流儀』の原作(脚本は橋本裕志さん、監督は深川栄洋さん。主演は竹内涼真さん、出演は木村文乃さん)。著者の城山は、第14回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家です。

 

[おもしろさ] 刑務所内の多様な事件を現実的に解決していく

本書のおもしろさは、多岐にわたります。第一に、上下関係が厳しく、保身にばかり関心がいく幹部職員とは対照的に、多くの刑務官は、副看守長の宗片秋広のように、受刑者に寄り添い、あたたかい気持ちで更生させる道を模索していること。第二に、受刑者に希望を与えることが「刑務官の使命・役割」なのですが、その流儀を貫くことのむずかしさと尊さ。第三に、受刑者もいろいろなので、刑務官にもいろいろなタイプと考え方が不可欠であること-刑務官の役割は、言うまでもなく受刑者を更生させ、社会にもう一度送り出すことに尽きるわけです。とはいえ、いろいろな受刑者がいます。更生の進め方も、正しい答えがひとつというわけではありません。したがって、刑務官もまた、いろいろな個性があって、しかるべきなのです。第四に、「離職率が高い」刑務所で働いている人、例えば、医務官や薬剤師などにとっては、「最後にたどり着いた働き場所」にもなっており、そこで「必死に生きて、自分の役割を果たそうとしている」こと。第五に、刑務所内で起こるさまざまな事件を、いわば現実的に解決していく力を有した謎に包まれた上級刑務官(警備指導官)・火石司の手法の見事さなど。あと、「怒りの感情がわいたときは、数字を六まで数えると静まります。悩みごとは、文章にして書くと心が整理されて落ち着きます」。そんな火石のセリフも印象的です! 

 

[あらすじ] 五つの短編が有機的に関連づけられ、大きな物語

本書を構成するのは、それぞれに主な登場人物が異なる五つの話です。①仮出所した模範囚が失踪する話(「ヨンピン」)。②暴力団から足を洗う「Gとれプログラム」中に起きた入試問題の流出する話(「Gとれ」)。③受刑者の健康診断記録とレントゲンフィルムの消失する話(「レッドゾーン」。④すい臓がんで倒れた受刑者が外の病院での治療ではなく、刑務所内での療養を希望し続ける話(「ガラ受け」)、➄満期出所した放火犯を警察と共同で監視し、再犯を防ごうとする話(「お礼参り」)。ところが、そうした五つの話が有機的に関連付けられ、よく練られた一つの大きな物語になっているのです。