「お仕事いろいろ(3)」の第六弾は、泉ゆたか『横浜コインランドリー』(祥伝社文庫、2023年)。3年間、ブラック企業で働き、辞職した中島茜は、引きこもり状態に陥っていました。洗濯機が故障したので、近所の「ヨコハマコインランドリー」に行き、店長の新井真奈と話をしたことが契機となり、アルバイトとして働き始めます。本書では、そんな二人の交流を軸に、コインランドリーで働く人たちの仕事ぶり・業務内容、洗濯についての基礎的な知識、客との交流などが描かれています。
[おもしろさ] 「洗濯相談」をしながらマシーンの使い勝手を
本書のメインテーマは、引きこもり状態の中島茜が、コインランドリーでアルバイトとして働くうちに、新井真奈の考え方に影響され、少しずつ自分自身を見つめ直し、働く意欲を取り戻していくというストーリー展開です。また、コインランドリーの「賢い使い方」を知ることもできます。一例を挙げましょう。「毛布を何枚か一度に洗いたい」「冬物の寝具をまとめて洗濯したい」… …。ごく普通の洗濯乾燥機ではとても対応できないことでも、コインランドリーにある大型の洗濯乾燥機ならできてしまいます。しかも、クリーニングに出すよりもはるかに安いのです。ほかにも、「洗濯相談」をしながら、お客様に設置されているマシーンの使い勝手をアドバイスしていくという、そこで働いている人の「おもてなしの精神」を気づかせてくれることも、この本の特色と言えるでしょう。
[あらすじ] 「私の汚れた心を洗濯物みたいに丸洗いしたい」
中島茜が新卒で、そこそこ大きい不動産会社に就職してから早くも3年が経過していました。「挨拶の声が小さいんだよ! デカイ図体してなんなんだよそれ!」「はいっ!すみません。ご指導ありがとうございますっ!」… …。「ひとときもほっとする暇がなく、常に“忙しい”ことが、こんなに人の心を真っ黒に汚してしまうなんて、少しも知らなかった」。後先考えずに会社を辞めて半月が経ちました。その間、一歩も外に出ず「朝から晩までベッドの上でスマホの動画を眺め続けていた」のです。そんなとき、自宅にあるドラム式の洗濯乾燥機が動かなくなりました。カゴのなかに溜まった洗濯物を見ると、「自分の抜け殻を眺めているような気分」になった茜。近所にある「ヨコハマコインランドリー」を訪れると、「おはようございます。何かお手伝いすることはありますか?」という、店長・新井真奈の声が聞こえてきました。そして、初めてきた人にも分かるように、真奈の説明は、まさに懇切丁寧。サービスで出されたコーヒーを入れた紙コップを持つと、「温もりが全身に伝わるようだった」のです。真奈と話をしているうちに、「私の汚れた心を綺麗にしたい。洗濯物みたいにざぶざぶ丸洗いしたい」。そう思った茜。「もし良かったら、ヨコハマコインランドリーでアルバイトをさせていただけませんか?」「嬉しいです。ぜひお願いします」。かくして、茜と真奈の物語が始まったのです。


