「お仕事いろいろ(3)」の第九弾は、仲町六絵『京都西陣なごみ植物店 「紫式部の白いバラ」の謎』(PHP文芸文庫、2017年)。園芸の専門学校を出て、京都西陣にある花屋「なごみ植物店」の店員になったばかりの和久井実菜。姉の花弥が店長を務めるお店の一角に探偵事務所を設け、「植物の探偵」業を営んでいます。依頼人は、探偵料として店の商品を購入することになっているようです。一方、京都の公立大学の史学科で学び、京都府立植物園・広報部の配属された神苗健。「逆さまに咲くチューリップ」はありますかというという来場者からの問いかけを契機に、実菜の「助手」兼「依頼人紹介係」としてサポートすることに。実菜と健のコンピに持ち込まれる難問・謎と、その「秘密」・答えを描いた六つの短編からなる連作集。植物に関する知識・情報が満載です! 4冊出ている同シリーズの第一作。
[おもしろさ] 植物に関わる「謎」の数々が解明されていきます
本書に登場する謎は、「旅行先のバスの窓から見えた、逆さまに咲いている黄色いチューリップの真相」のほか、「織田信長公が食べていたかもしれないお菓子を再現したいという要望に応えるには」、「椿よりも花や葉がひらひらして、二色咲き分ける花って」、「紫式部の白いバラの正体」、「蛍の集まる草」、「茜色の桜と名付けられた布はどんな桜で染めたのか」といったものです。いずれも、なるほどと思わせる「謎解き」になっています。実菜の両親は、テレビにも出演している著名なプラントハンター。彼女の将来の夢も、プラントハンターになること。そのために修業として、「植物の探偵」を名乗り、草花にまつわる謎を解決しようとしています。多様な花を鑑賞してもらう、珍しい植物を集めて保存する、市民の憩いの場を提供するといった植物園の使命にも言及されています。
[あらすじ] 植物園の広報部員が夢想した「女神」と「植物の探偵」
「春の女神がいるとしたら、どんな姿なのだろう!」 昔からそのようなことを夢想していたのは、広報部1年目の神苗健。学生時代に、ひょっとしたら「チューリップの咲き誇る植物園で、春の陽光を浴びながら、真剣白刃取りのポーズをした娘」かもと、勝手に想像したことがあります。広報部職員の仕事は、主に府立植物園でイベントの企画や広報の制作。イベントは多彩なので、江戸時代や戦前の植物に関する知識が要求される職場でもあります。でも、就職してまだ数日、右も左もわからない状態です。園内を歩いていた健が目撃したのは、想像していた「春の女神」のような女性でした。折からの強風で飛ばされた白い画用紙をつかまえたのです。そこには、逆さまに咲いていた「チューリップ」が描かれていました。描いた幼い女の子(市川真美)によると、以前、旅行先で見たとのこと。そういうものがどこにあるのかを尋ねるために、母親(市川貴美子)と一緒に植物園にやってきたようです。答えに困ってしまった健。他方、「私が探しましょう」と言ったのが、健の想像する「春の女神」。もらった名刺には、「植物の探偵 和久井実菜」と書かれていました。こうしたことがきっかけとなり、植物に関する謎と謎解きの物語がスタートすることになります。ちなみに、「逆さに咲いた黄色いチューリップ」の真相は、チューリップではなく、和歌山県すさみ町で10月に開催される「紀伊ジョウロウホトトギス祭」にあるように、「キイジョウロウホトトギス」という花でした。



