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『宝くじが当たったら』 - 大当たりしたときのための「心の準備」に

「おカネ」を扱った作品の076F3128-DF5C-4F4F-9954-8175CDA9BF3D.png第二弾は、安藤祐介『宝くじが当たったら』(講談社文庫、2015年)。「もし一等が当たれば、〇〇をしてみたい!」 そのような一攫千金の夢を追い求めて、多くの人が宝くじにおカネを費やしています。ほとんどの場合は、ハズレ。が、たとえ当たらなくても、また同じ夢を見るために、幾度となく宝くじ売り場に足を運んでしまう人は、けっして少なくないのです… …。本書では、ごく普通のサラリーマン・新堂修一が宝くじで一等2億円を引き当てたことで、おカネに振り回され、激しい混乱の渦に飲み込まれていく様子がリアルに再現されています。万一、高額の当選金を得るという幸運に見舞われた場合でも、必ずしも「夢のような生活」が待ち受けているわけではないようですね。間違いなく言えるのは、宝くじで大当たりをした場合の「心の準備」をするには、この本が格好の参考書になりえる点です! 

 

[おもしろさ] 当選金2億円で失ったものと得たもの

本書のおもしろさは、購入した宝くじが2億円を引き当てたことがわかった瞬間から始まり、自己都合で退職し、「一文なし同然」になってしまうまでの間、興味深い叙述が盛りだくさんである点にあります。具体的には、①実際に「いなほ銀行」で当せん金を受け取るまでのプロセス。②「ぜっっったいに、誰にも言わないでよ。約束してほしい」という言葉とともに、家族(母)に告知したものの、親戚・慈善団体・同級生といった具合に、情報が少しずつ伝わっていったこと。③ネットに実名が流出してしまったことに伴う波紋や、「闇の向こうから顔のない人間たちに殴られているような、言い知れぬ恐怖」を感じてしまったこと。④社内にも知れ渡ってしまったこと。➄詐欺にあい4000万円を持ち逃げされたこと。⑥最後に、「本当に信じられる人と巡り合えた」ことなど… …。

 

[あらすじ] 肝に銘じたのは、これまでと同じ日常を保つこと

わくわく食品という中堅食品会社の経理課で働いている、宝くじ歴3年、年収400万円の新堂修一32歳。バラで買った10枚の宝くじを手に、「年の瀬ジャンボ宝くじ」当選発表のWebページを開きました。「当せんしていないことを確かめるだけの作業なのに、ほんの少しだけ心が躍る」瞬間です。気持ちが冷め始めた7枚目。ひとつひとつ番号を照合していくと、なぜか合っているではありませんか。「あれ? おかしい」。もう一度当せん番号を確認します。「急に恐ろしくなって、いったんくじ券から目を逸ら」したあと、再び確認。「当せん」していることがわかると、彼の思考が「停止」。しばらく経つと、激しい衝動を駆られました。「誰かに言いたい。言ってしまいたい… … 。自慢したいという感覚とは違う。この大きすぎる秘密を誰かと共有したかった」からです。ただ、「宝くじ当せん者」でネット検索すると、「当せん者の実名が公表され、当せん額も法外に高い」外国の事例を見ると、多くは転落の人生でした。名前が公表されず、当たった人も周囲に公表しない日本の事例はほとんど見当たりません。いろいろ考えた挙句、肝に銘じたのは、これまでと同じ日常を保つことでした。仕事始めの朝、いつも通りに出勤した修一。しかしながら、徐々にではありますが、これまでとは異なった生活が起動していくことになります。