2026年2月25日に5万8000円台を突破し、最高値を更新した日経平均。一時は年末に向けて6万円の大台を超えるという予想さえ出されました。ところが2月28日、米・イスラエルがイランへの軍事攻撃を開始したことで、地政学的リスクが一気に噴出。株価もジェットコースターのように乱高下しながら、低迷しているのが昨今の状況です。株価が今後どう動くのかについて、正確に予想できる人はだれもいません。投資家の皆さんは、各自の「相場観」や思惑・希望を持ちながら株式相場の動きを見守っておられることでしょう。なお、2024年度末における個人株主数は約1600万人に達しているそうです。多くの人々に希望を、あるいは逆に絶望を与えてきた株式投資。そこには、不思議な魅力が隠されているのもまた事実。今回は、「株」をテーマにした三作品を紹介したいと思います。本ブログでは、2020年1月9日~1月21日にも同じテーマで作品紹介を行っています。
「株」を扱った作品の第一弾は、牛島信『少数株主』(幻冬舎、2017年)。日本の株式会社の99.8%は上場していません。非上場会社の大半は同族会社。その経営者のなかには、会社のお金で遊んだり、公私混同をエンジョイしていたりしている者が含まれています。本来は、非上場会社だって株主総会をやらないといけませんし、バランスシートも損益計算者も報告しなければならないことになっているのです。しかし、実際には、定時株主総会をまともに開いたことがないケースもまれではありません。したがって、「自社の少数株主の存在など、ほとんど無視されている」のが現状なのです。本書は、不動産で財を成した高野敬夫68歳と、彼の高校時代からの友人である大木忠弁護士がタッグを組んで、そうした現状にメスを入れていくプロセスを描いています。
[おもしろさ] オーナー経営者の身勝手さと少数株主の不利益
非上場会社の大半はオーナー経営者。ほかの株主は少数派であることがほとんどです。それゆえ、少数株主が配慮されるのは例外的。一口で言うと、非上場会社の少数株主は、フェアな扱いを受けていないのです。例えば、会社がたくさん儲けたとしても、配当をしなかったり、しても僅かだったりするわけです。腐るほど資産があっても、利益は雀の涙ってことで、オーナーが平然としているのです。もっと払える配当、高値で買い戻せる株、もっと投資に回せる内部留保、放置したまま眠り続けている土地の含み益… …。そうしたものを実現させることは、非上場会社の少数株主には無縁だと言わざるを得ません。オーナー経営者は少数株主を相手にしないからです。「非上場会社のコーポレートガバナンスなんて誰も話題にしない」のです。その反面、非上場会社の株が相続の対象になったりすると、考えられないような多額の相続税を支払わらざるを得なくなるケースもあるようなのです。では、そのように少数株主の利益が守られていないという現状を打破するには、どのような方法があり得るのでしょうか。そこで登場するのが、大木忠と高野敬夫のコンビなのです。「大木は、徹底的に調べて、とことん内部で議論し、鉄壁のような論理を組み立て、そこへ人情を加味し、必勝の布陣を敷く。そうした仕事のしかたがたまらなく好きなのだ。時間は気にしない。コストも気にしない。仕事の質だけ問われる」。読者は、そうした質の高い仕事ぶりがいかなるものなのかを知ることができることでしょう。
[あらすじ] 企業法律の世界では名の知れた大木忠弁護士!
80人もの弁護士を抱える大木忠弁護士事務所。ビジネス・ロー(企業法律)の世界では名の知れた人物です。そこを訪れた高野敬夫は、彼の母が、知り合いの川野純代から彼女の持っている墨田鉄工所(社長は川野宗平)の株を500万円で買ってくれと頼まれたこと、お金を持っている高野のほうで買ってほしいと依頼されたので、買おうと思っているがどうだというのが、相談内容でした。ところが、高野が墨田鉄工所の株を買おうと川野純代に伝えたら、「私の株も買ってくれ」という人がたくさん現れます。その動きを天命だと感じた高野は、「その人たちの株を買い取って、株主になって会社に働きかけたい」と思うことに。「世の中の非上場会社すべてがフェアな経営をするように、少数株主がフェアな扱いを受けるようにする」という使命感を抱くことになったのです。「非上場会社にこそコーポレートガバナンスが大事だってことだ」。非上場会社も、社外取締役を入れるべきなんだ。監視の成果としての配当の増額、または会社による高値での自社株の取得。そして、「公私混同をやめさせるつもりだ。それに、経営を改善して増配や自己株取得を促す。株主総会で提案する」。高野はそのような願望を持っていたのです。こうして、高野と大木弁護士の尽力で、そうした現状にメスが入れられていきます……。
