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『株価操縦』 - 「理不尽な世の中」と「不可解な株価の動き」

「株」を扱った作品の第二弾は、相場英雄『株価操縦《マニピュレーション(Manipulation)》』(ダイヤモンド社、2006年)。「不可思議な株の乱高下の背景にある仕手筋の暗躍、風説の流布、未公開株を使った詐欺事件」といったマネー犯罪の闇を描いた作品です。プロレス興行会社「UEW」などを食い物にしようと攻撃する金融ブローカーで、在日韓国人三世の沼島直樹の「復讐劇」。それに対抗しようとするのは、頭脳明晰なプロレスラーの本条潤一郎と幼馴染の新聞記者・菊田美奈子。プロレス業界活性化の方策にも言及。『双子の悪魔』(幻冬舎文庫、2011年)は、本書の改訂版。

 

[おもしろさ] 沼島直樹 VS 本条潤一郎・菊田美奈子

ITツールの発展により、さまざまな領域で利便性が高まったことは事実。ところが、その裏では、そこにつけ込もうとする人間による経済犯罪が急増しています。例えば、司法の目が光っているにもかかわらず、株価の操縦は、ネット、マスコミ、ネット証券を舞台にした信用取引など、ありとあらゆる手段をフル動員して行われているのです。本書のおもしろさは、「沼島直樹 VS 本条潤一郎・菊田美奈子」の対抗軸をベースに、沼島直樹の暗躍と株価操縦の実態をリアルに浮き彫りにしている点にあります。「直樹はこんなことを言ってたな。『この国はすべてがインチキだ。マニュピュレーションだ』て。そんで、インチキばかりのこの国をガタガタにしてやるってな」。ただ、「目に見えない壁、出身地や生まれた家、育った環境でその後の人生がきっちり決められてしまう」という、理不尽な現実という壁を必死に壊そうとしているという、沼島の行動の背景にある事情にも触れられています。

 

[あらすじ] 「抜け出すことができない原体験」と「復讐劇」

始まりは新潟県隼市。プロローグで登場する一つ目の出来事は、1987年に沼島直樹が屑鉄業者「沼島興業」を経営する父親が古びた鉄工所「三宝金属」で死ぬという悲報に直面したこと。二つ目は、12歳の菊田美奈子(菊田金属のお嬢様)と、大のプロレスファンである7歳の本条潤一郎(実家が本条金型を経営。本条家の「跡取り息子」)が同市で行われたプロレス興行を直に見る機会を得たこと。三つ目は、2005年5月、老舗中華料理レストランチェーン「西大后」の株価操縦事件に関して菊田美奈子(2003年に経済部記者になっていた)が書いた、大和新聞の記事。本書の本質的な部分のすべてが凝縮されているプロローグ。『双子の悪魔』の解説者・中沢孝夫の言葉を借りれば、「人間の抜け出すことができない原体験」「格差」「死」「憎しみ」、そして「自分のことはわからないという事実」が指摘されているのです。2005年1月、UEWのレスラーになっていた本条潤一郎は、米国の大学に留学経験を有する異色の秀才レスラー、ヘビー級期待の星として、後楽園ホールのリングで試合に臨んでいました。その後、株式投資とネットサーフィンが趣味の彼は、日本株の出来高ランキングで西大后が上位にランクされていることを知ります。同年2月、大和新聞の菊田美奈子記者が詰める東京証券取引所記者クラブに、会社社長・松田肇による西大后株の買い占めから始まり、さらにTOB(株式公開買い付け)に連なっていく情報が入りました。報道により、同社の株は乱高下。怪しげな情報が飛び交ったのです。背景には、違法な仕手戦により巨額の富を得ようとする金融ブローカーの暗躍がありました。同年9月、上述の記事に示されるように、菊田美奈子は、西大后の株価操縦事件に巻き込まれたことで、東京地検特捜部に呼び出され、事情聴取をされました。このようにして、美奈子の不幸とともに、物語が本格的にスタートすることに。

 

株価操縦

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