「お仕事いろいろ(4)」の第二弾は、相沢沙呼『小説の神様』(講談社タイガ、2016年)。同級生となった「売れない作家」の千谷一也と、「人気作家」の小余綾詩凪。引っ込みがちで、自信喪失状態が続いている一也。片や、「多くの人に囲まれ、きらきらとした陽向で生きている」感が強い詩凪。そうした対照的なふたりの高校生作家を通して、作家という仕事の醍醐味・難しさ・苦しみが描かれています。また「小説とはなにか」についても考えさせてくれる作品です。「小説の神様」シリーズ一作目。2020年10月2日公開の映画「小説の神様 君としか描けない物語」(監督は久保茂昭さん、佐藤大樹さんと橋本環奈さんのダブル主演)の原作。
[おもしろさ] 小説には、人生を左右する大きな力が宿っている
「今まで、たくさんの小説に助けてもらってきました。だから、わたしも、そういうふうに誰かの心に響く小説を書きたいなって… …。そんなすてきな作家になれたらなんて… …」と、作家を夢見る女子生徒。「小説が-、人の心なんて動かすものか。……物語がどれほど愛や勇気を語ったところで、それは人の心には届かないよ。小説は誰の心も震わせない。誰にも響かない。誰の心にも届かない。そんな力を、たかが文章が持ちあわせているはずがないだろう」と一也。そして、「馬鹿なことを、言わないでもらえるかしら… …。小説に力がない、ですって? それは、あなたが書いた小説がなんの力も持っていない-、の間違いじゃないの? ……小説には、わたしたちの人生を左右する、大きな力-現実に立ち向かうための力―が宿っているわ。……わたしには、小説の神様が見えるから-」と、詩凪が答えるのです。本書を読めば、詩凪の言うように、「小説の力」を確認できるのではないでしょうか! さらに、「私は、物語を書くために生きているのだって……、そう悟ることができる、瞬間」を経験させてくれる「小説の神様」の存在にも思いを馳せることでしょう。
[あらすじ] ひとりがプロットを創り、ひとりが小説に仕上げる!
3年前、中学2年生の頃に「千谷一夜」というペンネームでデビューした千谷一也。父親も作家だったのですが、それを公表すると、「誰も純粋に評価してくれないのではないか」と考えた彼は、一切の素性を伏せた「覆面作家」としてデビューを果たしたのです。ところが、作品は酷評され、売れ行きも振るわず、すっかり自信を失っています。担当の編集者である河埜さんからは、「胸を張って発表できる作品を一緒に作りましょう」と、励ましの言葉が。でも、実のところ、まだ小説を書きたいと思っているのか、それとも、もう小説を書くことをあきらめているのか、自分でもよくわからない状態が続いていたのです。ある日のこと、彼が所属している文芸部の部長をしている九ノ里正樹から、この春に転校してきた小余綾詩凪を「文芸部に誘いたい」ので、彼女と親しくなってほしいと依頼。一也は、詩凪が小説に興味を持っているとは思えないと感じながらも、初対面で「小説は、好き、ですか」と尋ねたのです。しかし、詩凪の方は、一也の質問を「壊れてしまった人形」のような表情で受け止めたのです。それはその時点では、詩凪が「不動詩凪」というペンネームの人気作家であることを、一也は知らなかったのです。このようにして出会った二人の高校生作家。河埜さんからの提案で、「詩凪がプロットを創り、一也がそれをもとに小説を書く」というやり方が採られることになったのです。これが、一也の小説に対する向き合い方が大きく変わっていく契機となったのです。もっとも、「詩凪の構想した物語を果たして、自分の文章で再現できるのだろうか」と悩み、そしてもがく一也の苦行は、半端なものではありませんでした… … !


