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『添乗員さん、気をつけて』 - ツアコンという仕事の内容・労苦・真髄

「お仕事いろいろ(4)」の第四弾は、小前亮『添乗員さん、気をつけて 耕介の秘境専門ツアー』(ハルキ文庫、2019年)。国枝耕介34歳は、年間に200日以上を添乗する凄腕の「プロテン」(どの会社にも属さないプロの添乗員)。一番のお得意様である東栄旅行は、中堅の旅行会社なのですが、一般の日本人には縁遠い、いわゆる「秘境」ツアーのパイオニア的存在です。しかも、耕介に任されるのは、問題を抱えた客に対する対応力が試されるツアーばかりなのです。所収されている四つの話を通して、ツアコンという仕事の内容・労苦・真髄がよくわかる作品に仕上げられています。

 

[おもしろさ] 「耕介は、添乗員に向いている!」

ツアーコンダクター。かつて憧れの職業だった時代がありました。個人旅行が増え、団体旅行者数が下降線を辿り、添乗員の待遇の悪さが語られるようになると、この職業をめざす若者がめっきり減っているようです。なにしろ、「この仕事は24時間休みなしのサービス業」。神経をすり減らして辞めていく人も多く、「叩かれても痛みを感じない人」でないと、なかなか務まらないとも言われているからです。本書の読みどころは、そうした仕事をうまくこなしていくには、どのような心構え・対応力が必要なのかを示唆してくれている点にあります……。元来、私立の大学で英語を教えていたのですが、大学が経営難に陥ったことで失職。やむなく添乗員になった耕介でしたが、周りの人からは「添乗員という仕事に向いている」と言われています。耕介のどういったところが、そのような評価につながっているのでしょうか? ちなみに、彼の考え方の基本は、客のプライベートには関与しないという、暗黙のルールをわかってはいるのですが、「人間として見て見ぬ振りはできない。困っている人はなるべく助けてあげたい」というものでした。

 

[あらすじ] 任されるのは、難しいツアーばかり

第一話の旅行先はウズベキスタン。離婚の危機に瀕しているものの、3年ほど住んでいた現地を妻に見せたいと考えたゼネコン勤務の菊沢滋38歳。他方、「夫がわたしを殺そうとしている」と耕介に打ち明ける妻の菊沢佳奈……。第二話の舞台は、カリブ海に面した有数のリゾート地でもある中米の小国・ベリーズ。ペンネームを使い、顔はいっさい出さずに小説を書いている作家が取材のためにツアーに参加。ところが、ほかの客には作家であることを絶対に知られたくないので配慮することが求められています… …。第三話は、エチオピアはエルタ・アレへの旅行。「世の中に絶望している賢者の集い」と題される、「自殺志願者のコミュニティ」らしいサイトの中、「自殺ツアーに出かけよう」という呼びかけに応じて参加者が増えたというツアーの添乗員を依頼された耕介。果たして、どんなツアーになるのでしょうか? 第四話では、インドへの「ダークツーリズム」(戦争や災害の跡地など、人類の負の記憶が刻まれた土地をめぐる観光のこと)が扱われています。