経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

2025-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『ディア・ペイシェント』 - 患者と、どう向き合う? 

「南杏子が描く医療現場」として紹介する作品の第二弾は、南杏子『ディア・ペイシェント』(幻冬舎文庫、2020年)です。川崎市にある民間総合病院「佐々井記念病院」。「患者様プライオリティー」を唱える高峰新事務長(元エリート銀行マン)の方針が、病院…

『サイレント・ブレス』 - 終末期医療の大切さと大変さ

女性医師を主人公にした優れた作品を多く上梓されている作家の南杏子さん。医療小説には、一般の人にはなじみのない専門的知識がふんだんに盛り込まれています。そのため、書き手には、医師や看護師などとして、実際に医療に携わった経験のある方々がおられ…

『盗まれた視線』 - 探偵・川庄篤史が謎だらけの案件を解決していく! 

「探偵」を扱った作品の第三弾は、五十嵐貴久『盗まれた視線 吉祥寺探偵物語』(双葉文庫、2015年)。コンビニで働きながら、小学生の息子を育てている川庄篤史。事務所を開設しているわけではないものの、頼まれれば、探偵業務も引き受けるという、いわば「…

『タイム・ラッシュ』 - 「志乃の夢の中での殺人劇」と「それを追いかける探偵」

「探偵」を扱った作品の第二弾は、神永学『タイム・ラッシュ-天命探偵 真田省吾』(新潮文庫、2008年)。苦悶の表情で叫ぶ少年、ナイフで刺され、床を転げまわる女性、電車にはねられバラバラになる男……。それらは、19歳の中西志乃が見る夢の中に出てくる「…