経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『ひよっこ社労士のヒナコ』 - 顧問企業との距離感のむずかしさ

「会社のトラブルを扱った作品」の第三弾は、水生大海『ひよっこ社労士のヒナコ』(文藝春秋、2017年)です。社労士の正式名称は、「社会保険労務士」という国家資格者。「おおざっぱに言えば、会社の総務部のお手伝い」。採用から退職までの労働・社会保険…

『ハラスメントゲーム』 - ハラスメント事情の最前線! 

「会社のトラブルを扱った作品」の第二弾は、井上由美子『ハラスメントゲーム』(河出書房新社、2018年)です。マルオーホールディングス本社のコンプライアンス室長に任命された秋津渉が、唯一の部下である高村真琴とともに、セクハラ、パワハラなどの難問…

『就業規則に書いてあります!』 - ブラック体質と格闘する女性労務管理者

多くの人たちが一緒に働いている会社。が、社員たちが生まれ育った環境や境遇はバラバラです。仕事のやり方やスピード感はけっして一様ではありません。さらに、上司と部下、男性と女性、正社員と非正規社員の間では、大きな考え方の違いやズレが横たわって…

『殺し屋、やってます。』 - 証拠を残さない「クールな殺し屋」

「殺し屋を扱った作品」の第二弾は、石持浅海『殺し屋、やってます。』(文春文庫、2020年)です。「やるべきことをきっちりやってこその職業」という考えの持ち主である富澤充。経営コンサルタントというオモテの稼業と殺し屋というウラの稼業をうまく使い…

『殺し屋のマーケティング』 - 「受注数世界一の殺しの会社」! 

「殺し屋」という闇稼業を描いた小説。非常にたくさん書かれています。しかし、それを「ビジネス」もしくは「仕事」と見立てた作品となると、非常に限られてくるように思われます。殺人は違法です。それゆえ、大々的に宣伝することはできません。もちろん営…

『派遣社員あすみの家計簿』 - 「お嬢さま」が経験する金欠・節約生活のリアル

「家計を扱った作品」の第二弾は、青木祐子『派遣社員あすみの家計簿』(小学館文庫、2019年)です。彼氏に騙され、「寿退社」してしまった28歳の藤本あすみ。ノー天気なところがある「お嬢さま」。どのようにして、生計を立てていくのでしょうか? 節約生活…

『三千円の使いかた』 - 御厨家女性四人の金銭感覚と「生活防衛」

企業や政府とともに、経済活動(収入・支出・投資・貯蓄)の主体として大きな役割を果たしているのは、家計です。経済小説の素材として非常に頻繁に扱われる企業とは対照的に、家計を扱った作品は、極めて少ないと言わざるを得ません。物価が高騰し、依然と…

『いつまでも白い羽根』 - 医療・看護現場とのファースト・コンタクト

「看護師を扱った作品」の第二弾は、藤岡陽子『いつまでも白い羽根』(光文社文庫、2013年)です。看護師になるためには、看護師国家試験に合格する必要があります。その受検資格を得るためには、指定された看護学校を卒業しなければなりません。本書では、…