経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

『会社を潰すな!』 - 実際に書店を再建させた人物が描いた再生劇とは? 

「書店を扱った作品」の第三弾は、小島俊一『会社を潰すな!』(PHP文庫、2019年)。金沢市を中心に6店舗を展開するものの、倒産の危機に直面している本屋「クイーンズブックス」に出向を命じられた銀行マンがその再生のために奮闘します。著者の小島は、実…

『金曜日の本屋さん』 - 「読みたい本が見つかる本屋」とは? 

「書店を扱った作品」の第二弾は、名取佐和子『金曜日の本屋さん』(ハルキ文庫、2016年)です。北関東の小さな駅の中にあり、喫茶コーナーと巨大な地下倉庫を有している書店「金曜堂」。そこを舞台に、底抜けに明るい店長の南槇乃、ド派手な服装と態度のオ…

『配達あかずきん』 - 本、書店、書店員、書店経営を考える

「出版不況」「ネット書店や電子書籍の台頭」「改善しない書店の閉店数」「本屋のない地方自治体の増加」といった言葉に示されるように、書店を取り巻く環境は、非常に厳しいと言わざるをえません。「もっぱら本という商品だけを、総花的に陳列・販売すると…

『こっちへお入り』 - 落語と仕事の組み合わせでバランスがとれる

「落語を扱った作品」の第二弾は、平安寿子『こっちへお入り』(祥伝社文庫、2010年)。落語の世界にのめり込むことで、仕事上のストレスが解消されていくことを見出した33歳の独身OL。忘れかけていた他人へのやさしさと、なにかに夢中になる情熱を徐々に取…

『しゃべれども しゃべれども』 - プロの落語家とアマチュアの落語家

テレビ、寄席、舞台などで視聴者や観客を笑わせてくれるプロの落語家。歯切れのいい語り口、ほがらかな表情……。日常的にもさぞかし楽天的なキャラクターの持ち主のように思われがちです。ところが実際には、品と味を兼ね備えた落語を求めて悪戦苦闘を繰り返…

『トヨトミの逆襲』 - EVの開発にこぎつけるまでの紆余曲折! 

「EVを扱った作品」の第三弾は、梶山三郎『トヨトミの逆襲 小説・巨大自動車企業』(小学館文庫、2021年)です。トヨタをモデルにして創業家とサラリーマン社長の確執を描いた『トヨトミの野望』の続編。「世界のトヨトミ」における2016年から2022年にかけて…

『EV(イブ)』 - 日本の自動車業界は壊滅的な事態に直面するのか? 

「EVを扱った作品」の第二弾は、高嶋哲夫『EV(イブ)』(角川春樹事務所、2021年)。とても恐ろしい本です。ホラー小説ではありません。世界の自動車業界における「死闘」の最前線を描いた作品です。もしハイブリッドカーが環境対応車として将来的に認めら…

『デッド・オア・アライブ』 - EVをめぐる異業種間での主導権争い 

地球の温暖化が深刻化し、脱炭素の流れが急速に進みつつある昨今、いま世界の自動車業界は大きく変わろうとしています。軸となるのは、ガソリン自動車に代わる次世代の環境対応車の開発です。想定されているのは、電気自動車(EV)、燃料電池車、ハイブリッ…

『広岡浅子 気高い生涯』 - もうひとつの広岡浅子像

「広岡浅子を扱った作品」の第二弾は、長尾剛『広岡浅子 気高い生涯 明治日本を動かした女性実業家』(PHP文庫、2015年)です。『小説土佐堀川』とはまた異なった視点で広岡浅子の生き様をフォローすることができます。「登場人物や出来事の内容・年次はもち…