経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『紙の城』 - 買収を企てるIT企業と阻止しようとする新聞社とのバトル

「新聞を扱った作品」の第四弾は、本城雅人『紙の城』(講談社、2016年)。新聞社を買収しようとするIT企業と、それを阻止しようとする新聞社の戦いが描かれています。と同時に、新聞業界の問題点と改革の方向性についても興味深い論点が提示されています。 …

『虚空の冠』 - メディアの覇権をめぐる過去・現在・未来

「新聞を扱った作品」の第三弾は、楡周平『虚空の冠』(上下巻、新潮社、2011年)。終戦後、新聞記者としてキャリアをスタートさせた渋沢大将という男が、新聞、ラジオ、テレビといった昭和のメディアをすべて手に入れたあと、人生最後のチャレンジとして、…

『小説 新聞社販売局』 - 全国紙の元記者が抉り出した業界の悪習とは? 

「新聞を扱った作品」の第二弾は、幸田泉『小説 新聞社販売局』(講談社、2015年)です。新聞社の販売部から見た新聞販売の最前線と担当者の苦悩にズバリ踏み込んだ作品。また、かつては「儲かる商売」と言われた販売店と新聞社との間に横たわっている歴史的…

『北海タイムス物語』 - 毎日決まった時間に読者に届ける-新聞人の誇り

朝起きて、真っ先にやること。それはその日の新聞に目を通すことです。いつも感心されられるのは、自宅で居ながらにして膨大な量の情報を得られること、そしてそれを可能にしている新聞づくりの仕組み・システムです。そうしたサービスを提供してくれる新聞…

『天涯の船』- 「松方コレクション」を創り上げた男女の数奇な運命

「絵画を扱った作品」の第五弾は、玉岡かおる『天涯の船』(上下巻、新潮文庫、2006年)です。浮世絵約8000点、西洋美術約3000点から構成される「松方コレクション」は、神戸の川崎造船所(現川崎重工)の初代社長で、莫大な富を築き上げた松方幸次郎が大正…

『ギャラリスト』 - 画商の使命は「芸術家の人生を創っていくことなり」

「絵画を扱った作品」の第四弾は、里見蘭『ギャラリスト』(中央公論新社、2015年)。日本の美術界の状況や画商の神髄を浮き彫りにした作品です。本書が刊行された頃の日本における純資産百万ドル以上の富裕層の人口は、アメリカに次いで世界第二位。しかし…

『冷静と情熱のあいだ』 - 忘れられない人が心の中に住み続けている

「絵画を扱った作品」の第三弾は、辻仁成『冷静と情熱のあいだBlu』(角川文庫、2001年)。ルネッサンス発祥の地であるイタリアの古都・フィレンツェ。近代的なビルが一切存在せず、まるで街全体が美術館のようです。そんな街を主舞台に、修復士の順正と、あ…

『写楽 閉じた国の幻』 - 「写楽探し」の常識を根底から覆す大胆な仮説

「絵画を扱った作品」の第二弾は、島田荘司『写楽 閉じた国の幻』(上下巻、新潮文庫、2013年)です。江戸時代に生まれた絵師・浮世絵師と言えば、葛飾北斎、歌川広重、喜多川歌麿、東洲斎写楽などの名前が浮かび上がります。そのなかで、写楽は、生没年不詳…

『楽園のカンヴァス』 - 真作か? 贋作か? 17年間の時空を超えた恋の行方! 

9月17日から10月1日まで、「食欲の秋」に因み、料理・食を扱った作品を5つ紹介しました。「食欲の秋」の次は、「芸術の秋」です。そこで、美術・絵画にまつわる作品を紹介していきます。経済小説を素材に「絵画を扱った作品」を解説するとなると、どのような…

『食堂かたつむり』 - 「食べられるもの」に対する「感謝」を込めた料理

「料理を扱った作品」の第五弾は、小川糸『食堂かたつむり』(ポプラ文庫、2010年)。10年間の都会での生活から山あいのふるさとに舞い戻った倫子がオープンさせた食堂の名は「かたつむり」。「食べられるもの」に対する「感謝」の念が込められた料理が提供…