経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『ナースコール!』 - やる気が出なかった看護師の成長物語

病気を患ったとき、白衣に身を包んだ医師と看護師ほど、頼りになる存在として映るものはありません。とはいえ、彼らもまた人の子。弱音を吐きたくなることもしばしばです。多くの場合、患者の治療やケアで心休まる時間もないほど厳しい労働を強いられている…

『女神のサラダ』 - 人生いろいろ、農家もいろいろ

「農業を扱った作品」の第三弾は、瀧羽麻子『女神のサラダ』(光文社、2020年)です。全国各地の多様な農家が舞台。さまざまな悩みを抱えることで「迷子になった女性たち」が、農業との関わりのなかで、生への指針と希望を見出していきます。八つの短編小説…

『農業男子とマドモアゼル』 - 30歳から始まった都会育ち女性の「農業ライフ」

「農業を扱った作品」の第二弾は、甘沢林檎『農業男子とマドモアゼル』(富士見L文庫、2017年)です。農業についての知識は皆無、関心さえなかった都会育ちの女性が、長野県の田舎で農業に携わることに。恋心を抱くようになる、実直で面倒見の良い地元の青年…

『おいしい野菜が食べたい!』 - 慣行農法 VS 有機栽培

広い耕地を大型の農業機械で耕作する欧米型の大農法。他方、日本農業を特徴づけてきたのは、狭い耕地に比較的多くの労働力と化学肥料を使う集約農業でした。しかし、既存の農業・農村はいまや、さまざまな点で曲がり角に立たされています。農業人口の激減だ…

『活版印刷三日月堂』 - 古い印刷所を蘇らせる活路! 

「印刷所を扱った作品」の第二弾は、ほしお さなえ『活版印刷三日月堂 星たちの栞』(ポプラ文庫、2016年)です。川越の町にある古い印刷所・三日月堂が舞台。「扉を開けると向かい側にすぐ活字の棚。壁は四方すべて活字のはいった棚で覆われている。鴨居の…

『本のエンドロール』 - 本づくりを陰で支える印刷会社の裏方たち

街を歩くと、目に飛び込んでくる、色とりどりの多様なポスター。毎日、世の中の動きを克明に伝えてくれる新聞。そこに挟みこまれた生活情報満載のチラシ。日常生活に潤いを与えてくれる本や雑誌……。それらを支えているのは、印刷に関わるさまざまな技術であ…

『Bの戦場』 - プランナーは「絶世のブス」! 

「ウェディングプランナーを扱った作品」の第二弾は、ゆきた志旗『Bの戦場 さいたま新都心ブライダル課の攻防』(集英社オレンジ文庫、2016年)です。物心ついた頃からブスだった北條香澄。子どもの頃に参列した従妹の結婚式のすばらしさに感激。しかし、一…

『ウェディングプランナー』 - 新郎新婦の「つよーい味方」

結婚式は、「幸せ」という言葉を文字通り実感させてくれる大きな「晴れ舞台」。とはいえ、当事者には、気苦労が絶えなくなることもまた、事実です。なぜならば、「式場選び」から始まって、「招待客の選定」、「挙式や披露宴のやり方や内容(料理・花・写真…

『あずかりやさん』 - 「一日百円でなんでもあずかります」

「すきま仕事を扱った作品」の第三弾は、大山淳子『あずかりやさん』(ポプラ文庫、2015年)です。「明日町こんぺいとう商店街」の西端にある「あずかりや・さとう」。店主は、盲目の若者・桐島透。7歳で視力を失ってからもう20年が経過しています。そんな店…