経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『かすがい食堂』 - 駄菓子屋から始まり、子ども食堂につながっていく

「食堂を扱った作品」の第三弾は、「子ども食堂」の発足につながる試みを描いた伽古屋圭市『かすがい食堂』(小学館文庫、2021年)。東京・下町の「駄菓子屋かすがい」を受け継いだ春日井楓子は、拒食症をはじめ、さまざまなトラブルを抱える子どもたちのた…

『小説 体脂肪計タニタの社員食堂』 - 社員食堂でのお仕事とダイエットへの挑戦

「食堂を扱った作品」の第二弾は、社員食堂を対象にした田中大祐『小説 体脂肪計タニタの社員食堂』(角川文庫、2013年)。世界初の家庭用体脂肪計を開発した健康計測機器メーカー「タニタ」で始まった社員のダイエットプロジェクトの顛末記。一筋縄ではいか…

『食堂のおばちゃん』 - 「町の定食屋」というお仕事

暖簾をくぐり、ドアを開けると、視野に入るのは、四人掛けの簡易テーブルとイスが置かれた「食堂」という世界。壁には、料理名を書いた紙がいくつも貼られています。どれを注文しようかと考えていると、香ばしさに、思わずお腹が鳴りそうになることも……。食…

『建築士・音無薫子の設計ノート』 - リフォームではなく、リノベーションを

「住むところを扱った作品」の第四弾は、逢上央士『建築士・音無薫子の設計ノート-あなたの人生、リノベーションします。』(宝島社文庫、2017年)。建築上のさまざまな悩みや問題への解決策を求め、音無建築事務所を訪れるクライアント。彼らの要望のウラ…

『そのマンション、終の住処でいいですか?』 - 中古マンションの建て替え問題

「住むところを扱った作品」の第三弾は、原田ひ香『そのマンション、終の住処でいいですか?』(新潮文庫、2022年)。有名な建築家・小宮山悟朗によって設計され、大きな話題を呼んだ「赤坂ニューテラスメタボマンション」。しかし、いまではとんでもない欠…

『ニュータウンクロニカル』 - 若葉ニュータウン50年史

「住むところを扱った作品」の第二弾は、中澤日菜子『ニュータウンクロニカル』(光文社文庫、2020年)。多摩ニュータウンを連想させる若葉ニュータウン。1971年から2021年までの半世紀に、巨大団地が歩んだ年代記。10年ごとの姿を描いた6つの短編から構成さ…

『くうねるところすむところ』 - 「小さな工務店」の「大きな物語」

家という商品は、食べ物や服や靴とは大きく異なります。自分のものにしようと思えば、普通は20年、30年という長期ローンを組まなければならないほど、お金がかかります。その結果、働いて稼ぐお金のうち、かなりの部分がローンに吸い上げられることになりま…

『競争の番人』 - 公正取引委員会の「誇りと使命」

「会社のトラブルを扱った作品」の第五弾は、新川帆立『競争の番人』(講談社、2022年)です。資本主義のバイタリティを支える条件のひとつに、「公平な競争」があります。公平な条件下で行われる経済活動こそが、それに関わる人々の「ヤル気」と「頑張り」…

『あなたの職場に斬り込みます!』 - 厚労省「特例事案指導官」

「会社のトラブルを扱った作品」の第四弾は、上野歩『あなたの職場に斬り込みます!』(光文社文庫、2022年)。さまざまな労働関連の法規に基づき適切な就業環境づくりを指導する立場にある労働基準監督署や公共職業安定所(ハローワーク)。いずれも労働局…