2021-01-01から1年間の記事一覧
「書店を扱った作品」の第三弾は、小島俊一『会社を潰すな!』(PHP文庫、2019年)。金沢市を中心に6店舗を展開するものの、倒産の危機に直面している本屋「クイーンズブックス」に出向を命じられた銀行マンがその再生のために奮闘します。著者の小島は、実…
「書店を扱った作品」の第二弾は、名取佐和子『金曜日の本屋さん』(ハルキ文庫、2016年)です。北関東の小さな駅の中にあり、喫茶コーナーと巨大な地下倉庫を有している書店「金曜堂」。そこを舞台に、底抜けに明るい店長の南槇乃、ド派手な服装と態度のオ…
「出版不況」「ネット書店や電子書籍の台頭」「改善しない書店の閉店数」「本屋のない地方自治体の増加」といった言葉に示されるように、書店を取り巻く環境は、非常に厳しいと言わざるをえません。「もっぱら本という商品だけを、総花的に陳列・販売すると…
「落語を扱った作品」の第二弾は、平安寿子『こっちへお入り』(祥伝社文庫、2010年)。落語の世界にのめり込むことで、仕事上のストレスが解消されていくことを見出した33歳の独身OL。忘れかけていた他人へのやさしさと、なにかに夢中になる情熱を徐々に取…
テレビ、寄席、舞台などで視聴者や観客を笑わせてくれるプロの落語家。歯切れのいい語り口、ほがらかな表情……。日常的にもさぞかし楽天的なキャラクターの持ち主のように思われがちです。ところが実際には、品と味を兼ね備えた落語を求めて悪戦苦闘を繰り返…
「EVを扱った作品」の第三弾は、梶山三郎『トヨトミの逆襲 小説・巨大自動車企業』(小学館文庫、2021年)です。トヨタをモデルにして創業家とサラリーマン社長の確執を描いた『トヨトミの野望』の続編。「世界のトヨトミ」における2016年から2022年にかけて…
「EVを扱った作品」の第二弾は、高嶋哲夫『EV(イブ)』(角川春樹事務所、2021年)。とても恐ろしい本です。ホラー小説ではありません。世界の自動車業界における「死闘」の最前線を描いた作品です。もしハイブリッドカーが環境対応車として将来的に認めら…
地球の温暖化が深刻化し、脱炭素の流れが急速に進みつつある昨今、いま世界の自動車業界は大きく変わろうとしています。軸となるのは、ガソリン自動車に代わる次世代の環境対応車の開発です。想定されているのは、電気自動車(EV)、燃料電池車、ハイブリッ…
「広岡浅子を扱った作品」の第二弾は、長尾剛『広岡浅子 気高い生涯 明治日本を動かした女性実業家』(PHP文庫、2015年)です。『小説土佐堀川』とはまた異なった視点で広岡浅子の生き様をフォローすることができます。「登場人物や出来事の内容・年次はもち…
放映中のNHK大河ドラマ『青天を衝け』。渋沢栄一をはじめ、五代友厚や岩崎弥太郎など、近代日本の経済的な基盤を創った実業家が登場します。渋沢は元幕臣、五代は元薩摩藩士、岩崎は元土佐藩士と、いずれもれっきとした武士の出身。皆、男性です。当時はまだ…
「医師を扱った作品」の第四弾は、久間十義『禁断のスカルペル』(日本経済新聞出版社、2015年)です。東北のある中規模地域病院が舞台。陸奥哲郎医師の指導のもと、卓抜な技術を有した医師たちによる腎臓移植術が行われていました。しかし、悪くなった腎臓…
「医師を扱った作品」の第三弾は、海堂尊『新装版 チーム・バチスタの栄光』(宝島社文庫、2015年)。そのミステリアスな出来事は果たして「殺人」なのか? 真相が解き明かされていく医療ミステリーです。大学病院における組織や医療の実情、チームで手術を…
「医師を扱った作品」の第二弾は、林宏司『トップナイフ』(河出文庫、2019年)です。トップナイフとは、医師の中でも超一流の技術を持った「頂点の外科医」にのみ与えられる最高の称号。天才的な脳外科医たちの苦悩と希望が描かれています。多くの脚本を手…
テレビドラマでよく取り上げられるお仕事のひとつに、医師があります。医師とは、医師法の適用を受けて、病気の診察、治療、投薬に当たる人のこと。もっぱら研究に従事する研究医を除けば、勤務医と開業医の違いはあるものの、医師の大部分は、患者とじかに…
「外資を扱った作品」の第三弾は、保田隆明『投資銀行青春白書』(ダイヤモンド社、2006年)です。経済や株式の知識をまったく持っていないにもかかわらず、外資系投資銀行「マンハッタン証券」に就職した「イマドキのOL」の奮闘記。企業の合併(M&A)や資金…
「外資を扱った作品」の第二弾は、泉ハナ『外資のオキテ』(角川文庫、2018年)です。外資系企業で働くことを夢見てきた女性が実際に働いてみて経験することになる出来事がリアルに描写されています。就職先を斡旋する派遣会社とのあるべき関係についても考…
経済のグローバル化が進んだ1990年代、外国の資本が日本に大挙して押し寄せました。多くの企業が外資系企業によって買収されました。その結果、外資という存在が大きくクローズアップ。が、その実態は依然としてベールの中です。外資系企業で働いている人た…
「詐欺師を扱った作品」の第三弾は、山崎将志『小悪党』(日本経済新聞出版社、2014年)です。先に紹介した『地面師たち』と『トロイの木馬』は、いずれも詐欺という行為を「騙す詐欺師の視点」から見た作品でした。それに対して、この『子悪党』はいわば「…
「詐欺師を扱った作品」の第二弾は、江上剛『トロイの木馬』(朝日文庫、2020年)です。どうしようもない国家を転覆させたい。が、爆弾など使わない。知恵を働かせて、世の中を転覆させる。それこそが、本書に登場する詐欺師・クルス八十吉たちの矜持なので…
人を騙して、お金や品物を取ったり、損害を与えたりする詐欺という行為には、さまざまな手口があります。ポピュラーなところでは、オレオレ詐欺、還付金詐欺、ワンクリック詐欺、フィッシング詐欺、結婚詐欺など。冷静に考えれば騙されたりしないように思わ…
「官僚を扱った作品」の第二弾は、周木律『あしたの官僚』(新潮社、2021年)です。厚生労働省キャリア技官として働いている松瀬尊30歳の目線で、官僚という世界のオモテとウラが浮き彫りにされています。「俺……官僚になるよ。立派な官僚になって、日本のた…
「忖度」(そんたく)という言葉があります。相手の心、気持ち、立場を考えて行動することという意味です。それ自体、けっして悪い行動ではありません。が、官僚たちが政治家の気持ちや意向を察して便宜を図ったり、上位の立場にある人だけを特別扱いしたり…
「お墓を扱った作品」の第二弾は、江上剛『一緒にお墓に入ろう』(講談社文庫、2021年)です。お墓のあり方をめぐって、妻と愛人の言動に右往左往する銀行役員の姿がコミカルなタッチで描きだされています。また、墓じまいがどのようにして決意され、どのよ…
「後を継いでくれる子どもがいない」「先祖代々のお墓が遠方にあり、なかなか墓参りに行けない」「維持・管理の負担が大きい」「子や孫に負担を負わせたくない」……。少子・高齢化、核家族化、地方の過疎化などの進展に伴い、「墓じまい」を選択する人が増え…
「旅館を扱った作品」の第三弾は、中居真麻『今日から仲居になります』(PHP研究所、2016年)。老舗旅館を舞台にした新人仲居の奮闘記。仲居・旅館業を扱ったお仕事小説でもあります。「本物のおもてなし」とはなにか! 「この世界に楽な仕事はない。だけど…
「旅館を扱った作品」の第二弾は、田中伸治『会社再生ガール』(青月社、2010年)。再建という美名のもと旅館の転売で大儲けをしようとするコンサルティング会社と、それに対抗して旅館の存続を図ろうとするコンサルティング会社との攻防劇が描かれています…
コロナ禍で大きく抑制されているヒトの移動。とはいえ、それは、人々の生活を維持していくうえで欠かせない経済活動のひとつです。移動の目的は、娯楽、食事、仕事、旅行・観光など、多様です。一日で完結しない場合や遠隔地に移動する場合は、宿泊が必要に…
「保育士を扱った作品」の第二弾は、貴水玲『社内保育士はじめました』(光文社文庫、2018年)。子どもと接する術がよくわからない新米保育士が失敗を繰り返す中で徐々に子どもやその親たちとの距離感を見極め、仕事に喜びを発見するようになっていきます。…
子どもが生まれても働き続けたい。安心して子ども預ける場があれば、仕事を辞めたくない……。そのように考えている人は極めて多いようです。ところが、預けられる保育施設がなかなか見つかりません。保育施設には、定員数や保育士の配置基準があり、子どもの…
「カラ売り屋を扱った作品」の第四弾は、黒木亮『カラ売り屋VS仮想通貨』(角川書店、2021年)。パンゲアによる「カラ売り屋」シリーズ四作目。8月27日に出版されたばかりの最新作です。今回は、仮想通貨交換業者、巨大航空会社、新興電気自動車メーカーをタ…