経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『吠えろ! 坂巻記者』 - わがままな上司との葛藤の末に! 

新聞記者の仕事は、世の中の情報を人々に正しく伝えること。そのためには、綿密な取材・調査・学習などを通し、エビデンスを明確にしたうえで記事を書くことが求められます。ところが、取材相手が常に協力的かと言うと、けっしてそうではありません。触れら…

『警視庁53教場』 - 警察学校教官の謎の死から始まる物語

「警察学校を扱った作品」の第二弾は、吉川英梨『警視庁53教場』(角川文庫、2017年)。2001年の警視庁警察学校1153期小倉教場に所属していた学生たちの動きと、16年後の「事件」に対する捜査活動が並行して語られていきます。捜査するのは、警視庁刑事部捜…

『教場』 - 冷酷冷徹な白髪教官・風間公親

2023年6月14日、事件が起こりました。入隊間もない18歳の自衛官候補生(守山駐屯地所属)が自動小銃を発砲し、指導役として教育に当たっていた陸上自衛隊員の上官3名を死傷させたのです。候補生が自衛官に任官されるまで3カ月。さらに1年9カ月の任期を終える…

『グリーン・グリーン』 - 都会育ちの農業オンチが農林高校の教師に! 

「高校教師を扱った作品」の第二弾は、あさのあつこ『グリーン・グリーン』(徳間文庫、2017年)。県立喜多川農林高校の教師になった翠川真緑(みどりかわ みどり)。「グリーン・グリーン」は彼女のあだ名です。都会育ちで、農業オンチのグリーン・グリーン…

『学校のセンセイ』 - 高校教師の右往左往! 

教師モノのドラマや小説の主人公。連想しがちなのは、ヒーローのような活躍とか、頼りがいのある「先輩」とか、品行方正な人格者とか、「教師=尊い職業」といった考え方ではないでしょうか? しかし、教師もまた人間。生徒との距離感がわからなかったり、仕…

『羊と鋼の森』 - 「心が震えるような美しい音色」を作り出す調律師! 

「ピアノを扱った作品」の第二弾は、宮下奈都『羊と鋼の森』(文藝春秋、2015年)。弦の張りを調整し、ハンマーを整え、ピアノがより美しく音楽を形にできるようにする調律師。ピアニストが美しい音を出せるには、彼らの存在を欠かすことができません。高校…

『ピアノマン』 - ジャズピアニストの苦悩のかなたにあるもの! 

『エリーゼのために』という曲のよく知られた冒頭。ほんの一節ですが、学生時代の一時期、ピアノで音を出せたことがあります。とてもうれしく思った。そんな記憶があります。それ以来、ピアノに触れる機会はなく、聴くこともほとんどありません。ただ、何年…

『小説 若おかみは小学生!』 - 誰も拒まない。受け入れ、癒してくれる「春の屋旅館」

「旅館の女将を扱った作品」の第二弾は、令丈ヒロ子(原作・文)、吉田玲子(脚本)『若おかみは小学生! 劇場版』(講談社文庫、2018年)。交通事故で両親を亡くした小学校六年生の関織子(通称おっこ)が祖母の営む温泉旅館「春の屋」で若女将として修業す…

『海近旅館』 - 省力化 + サービスの充実 ⇒ 旅館の立て直し

コロナ禍で、人の移動が大きく制限され、深刻な打撃を受けた宿泊業界。政府が旅行代金を補助する全国旅行支援を始めたのが、2022年10月。それ以降、日本人の延べ宿泊者数は大きく増加しています。ところが、多くの従業員が辞めてしまったことで、今度は深刻…