経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『トロイの木馬』 - 知恵で国家を転覆させる! 詐欺師の矜持

「詐欺師を扱った作品」の第二弾は、江上剛『トロイの木馬』(朝日文庫、2020年)です。どうしようもない国家を転覆させたい。が、爆弾など使わない。知恵を働かせて、世の中を転覆させる。それこそが、本書に登場する詐欺師・クルス八十吉たちの矜持なので…

『地面師たち』 - 百億円の土地を騙し取る! 

人を騙して、お金や品物を取ったり、損害を与えたりする詐欺という行為には、さまざまな手口があります。ポピュラーなところでは、オレオレ詐欺、還付金詐欺、ワンクリック詐欺、フィッシング詐欺、結婚詐欺など。冷静に考えれば騙されたりしないように思わ…

『あしたの官僚』 - ブラック企業顔負けの労働現場のなかで

「官僚を扱った作品」の第二弾は、周木律『あしたの官僚』(新潮社、2021年)です。厚生労働省キャリア技官として働いている松瀬尊30歳の目線で、官僚という世界のオモテとウラが浮き彫りにされています。「俺……官僚になるよ。立派な官僚になって、日本のた…

『官僚たちの夏』 - 官僚たちの今・昔

「忖度」(そんたく)という言葉があります。相手の心、気持ち、立場を考えて行動することという意味です。それ自体、けっして悪い行動ではありません。が、官僚たちが政治家の気持ちや意向を察して便宜を図ったり、上位の立場にある人だけを特別扱いしたり…

『一緒にお墓に入ろう』 - お墓をめぐる本人・妻・愛人のつばぜり合い

「お墓を扱った作品」の第二弾は、江上剛『一緒にお墓に入ろう』(講談社文庫、2021年)です。お墓のあり方をめぐって、妻と愛人の言動に右往左往する銀行役員の姿がコミカルなタッチで描きだされています。また、墓じまいがどのようにして決意され、どのよ…

『ある晴れた日に、墓じまい』 - イマドキのお墓事情

「後を継いでくれる子どもがいない」「先祖代々のお墓が遠方にあり、なかなか墓参りに行けない」「維持・管理の負担が大きい」「子や孫に負担を負わせたくない」……。少子・高齢化、核家族化、地方の過疎化などの進展に伴い、「墓じまい」を選択する人が増え…

『今日から仲居になります』 - 老舗旅館で出会う「おもてなし」

「旅館を扱った作品」の第三弾は、中居真麻『今日から仲居になります』(PHP研究所、2016年)。老舗旅館を舞台にした新人仲居の奮闘記。仲居・旅館業を扱ったお仕事小説でもあります。「本物のおもてなし」とはなにか! 「この世界に楽な仕事はない。だけど…

『会社再生ガール』 - 老舗旅館の再生に挑む企業再生プランナー

「旅館を扱った作品」の第二弾は、田中伸治『会社再生ガール』(青月社、2010年)。再建という美名のもと旅館の転売で大儲けをしようとするコンサルティング会社と、それに対抗して旅館の存続を図ろうとするコンサルティング会社との攻防劇が描かれています…