経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

『マグマ 小説国際エネルギー戦争』 - 地熱発電の将来性と課題

「発電方式を扱った作品」の第二弾は、地熱発電を素材にした真山仁『マグマ 小説国際エネルギー戦争』(朝日新聞社、2006年)。世界屈指の火山国と称されている日本。地球の内部にあるマグマによって作り出される「地熱貯留=熱水の水溜り」を活用する地熱発…

『黄金峡』 - 水力発電のためのダム建設が引き起こす大騒動

便利で快適なライフスタイルの基盤のひとつに、安定的な「電力」の供給があります。火力、水力、原子力といった発電方式以外にも、太陽光、風力、水素、アンモニア、バイオマス、地熱、メタンハイドレート(燃える氷)などの開発・実施の状況や可能性につい…

『ビストロ三軒亭の謎めく晩餐』 - オーダーメイドの料理を提供するビストロ

「フレンチ・レストランを扱った作品」の第三弾は、斎藤千輪『ビストロ三軒亭の謎めく晩餐』(角川文庫、2018年)。東京・三軒茶屋にある小さなビストロ。決まったメニューはなく、好みや希望をギャルソンに伝えると、名探偵エルキュール・ポアロが大好きな…

『タルト・タタンの夢』 - シェフは「名探偵」! 

「フレンチ・レストランを扱った作品」の第二弾は、近藤史恵『タルト・タタンの夢』(創元推理文庫、2014年)。下町の片隅にあるフレンチ・レストラン「ビストロ・パ・マル」。家庭料理っぽいメニューが人気。シェフの三舟は、フランスの田舎町で修業してき…

『グランメゾン東京』 - 高級フレンチの「光と影」

ヨーロッパを代表する料理と言えば、まず浮かぶのはフレンチとイタリアンではないでしょうか。イタリアンについては、本ブログ(2022年5月31日、6月2日、7日)で紹介したことがあります。今度はフレンチ・レストランに注目してみたいと思います。パスタやオ…

『臨3311に乘れ』 - 旅行代理店業務の黎明

「祖業を扱った作品」の第二弾は、城山三郎『臨3311に乘れ』(集英社文庫、1980年)。1948年に馬場勇をはじめとする5人のメンバーで成立した「日本ツーリスト」。「臨3311(サンサンイチイチ)」と呼ばれる修学旅行専用列車を走らせるなど、日本交通公社や日…

『風雲に乘る』 - 信用販売会社の勃興

2023年、最初に取り上げた作家は、城山三郎でした。彼は、実在した経営者をモデルにした経済小説をたくさん書いています。今回は、そのなかでも「企業の祖業」を扱った作品を二つ紹介したいと思います。ひとつは、信販会社の老舗で最大手の日本信販(1951年…

『兜町の男』 - 清水ワールドの全貌

「経済小説のパイオニアを扱った作品」の第二弾は、黒木亮『兜町(しま)の男 清水一行と日本経済の80年』(毎日新聞出版、2022年)。多くの資料の収集・分析と入念な取材をベースにして、清水の生涯を克明に描き上げたノンフィクション。城山三郎については…

『城山三郎の遺志』 - 「経済小説のパイオニア」考

経済小説というジャンルが日本で定着したのは、1970年代後半以降のことです。しかし、それ以前において、経済・企業・ビジネスマン・お金などを扱った小説がまったくなかったのかと言うと、けっしてそうではありません。高度成長期(1955年~73年)になると…