経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『シンデレラ・ティース』 - 歯科医院に持ち込まれる悩みの数々

「クリニックを扱った作品」の第三弾は、坂木司『シンデレラ・ティース』(光文社文庫、2009年)です。「小さい頃から、歯医者なんて大っ嫌いだった」。「キーンと耳ざわりなドリルの音! 私は今でもあの音を聞くと、右の奥歯がつきんと痛むような気がする」…

『カナリヤは眠れない』 - 身体の悲鳴を聞き分け、治療に当たる整体師

「クリニックを扱った作品」の第二弾は、近藤史恵『カナリヤは眠れない』(祥伝社文庫、2020年)です。「本人に治す気がなけりゃ、おれのできることなんてほんの少しや」と言うのは、合田接骨院の合田力。それに対し、「患者さんを治す気にさせるのも先生の…

『眠りの森クリニックへようこそ』 - 睡眠障害に対応する「眠りの専門医」

心身になんらかの異常が生じたとき、お世話になる医療機関。突如発生し、短期間に重症化するリスクが高い急性期疾患の場合、「病院」での治療になるのが通例のケース。ところが、軽い病気やケガ、あるいは、症状は落ち着いていたとしても、引き続き治療が必…

『おいしい給食』 - 給食の対照的なふたつの楽しみ方

「学校給食を扱った作品」の第二弾は、「食べる側」を描いた紙吹みつ葉『おいしい給食』(中公文庫、2020年)です。時代は1980年代。ハンサムだが、近づきがたい雰囲気を持つ無愛想な数学教師・甘利田幸男の唯一の楽しみは「給食」。毎食、構成を見極め、バ…

『給食のおにいさん』 - 給食をめぐる人間紋様

戦後の小学生であれば、ほとんどの人が経験した学校給食。世代による違いはあるかもしれませんが、多くの人にとっては、「歯を磨いたり顔を洗ったりするのと同じで、すぐに流れ去る日常でしかなかった」のではないでしょうか? 私自身、記憶に残っている給食…

『コンビニ兄弟』 - 「ひとにやさしい」コンビニって? 

「コンビニを扱った作品」の第二弾は、町田そのこ『コンビニ兄弟-テンダネス門司港こがね村店-』(新潮文庫、2020年)です。九州だけのコンビニチェーン「テンダネス」。「ひとにやさしい、あなたにやさしい」がモットー。同チェーンの門司港こがね村店を…

『本日はコンビニ日和』 - 過疎の町のコンビニ事情

人口が密な都会にあっては、ちょっと歩けば、必ず見つけることができるコンビニ。まったく初めての店に入っても、なぜか違和感なく買い物ができてしまいます。どのチェーンのコンビニに入っても、「類似の商品」がところ狭しと陳列されているからでしょうか…

『朝日堂オーダーメイド製本工房』 - 依頼人の思いがこもった本を丁寧に

「紙の本に関わる工房を扱った作品」の第二弾は、相原罫『朝日堂オーダーメイド製本工房』(メディアワークス文庫、2021年)です。製本会社「朝日堂」の屋上にひっそりと建つ小さな工房。野島志乃は、そこで「自分だけの一冊を作ってほしい」という依頼を受…

『菜の花工房の書籍修復家』 - 子ども頃の夢を実現させる! 

とても便利な電子書籍。保管するのに、空間的な場所を必要としません。読みたいときに、読みたい本を読むことができます。でも、紙の本にも大きな良さがあります。私にとっては、手軽に、かつ自由に書き込みができたり、付箋を貼ったり、常に目に見えるとこ…