2020-01-01から1年間の記事一覧
「頭取を扱った作品」の第三弾は、浜崎裕治『実録 頭取交替』(講談社、2014年)。ある地方銀行を舞台に繰り広げられる熾烈な権力抗争が描かれています。著者は、山口銀行で新宿支店長、大阪支店長、北九州支店長、取締役宇部支店長などを歴任した人物。 [お…
「頭取を扱った作品」の第二弾は、橋口収『[小説] 銀行頭取』(経済界、2005年)。地方銀行の頭取に「天下り」した人物が、リーダーシップをとって行内改革に奮闘します。著者は、大蔵省の主計局長、国土事務次官、公正取引委員会委員長を経て、1984年に広島…
一般の会社でトップに当たるのが社長。ところが銀行の場合、そのトップは頭取と呼ばれています。それは、明治5(1872)年に制定された国立銀行条例において、銀行の代表者を「頭取」とすると定められたことに端を発しています。字面を見ると、「トップ=頭を…
「警備員を扱った作品」の第二弾は、室積光『ドスコイ警備保障』(小学館文庫、2006年)。もし全社員が元力士という警備会社ができたら、いかなる展開があり得るのでしょうか? なにしろ、立ち合いのスピードはオリンピックの短距離選手並み、体重百キロを軽…
クルマを運転していると、道路工事などで片側通行を余儀なくされる場面に出くわすことがよくあります。制服を着て、誘導灯を持った警備員の指示に従って通行していれば、特段、問題が生じるわけではありません。そのため、誘導されている警備員の仕事ぶりに…
「転職を扱った作品」の第四弾は、垣根涼介『君たちに明日はない』(新潮文庫、2007年)。ここまでに紹介した三つの作品は、いずれも転職が本人の自発的な意思によって行われたケースでした。ところが、本人の意に反して、転職を余儀なくされるケースもない…
「転職を扱った作品」の第三弾は、雫井脩介『引き抜き屋(1)鹿子小穂の冒険 』(PHP研究所、2018年)。転職を支援することをビジネスにしているのがヘッドハンティング会社。そこで働くヘッドハンターたちの仕事ぶりは、これまであまり知られてはいない「未…
「転職を扱った作品」の第二弾は、滝羽麻子『株式会社ネバーラ北関東支社』(幻冬舎文庫、2011年)。30歳目前で「想定外の事実」にうろたえ、パニックになった弥生。転職を決意し、東京を離れ、北関東のある都市で働き始めるなかで、徐々に自分自身をとり戻…
2020年11月28日(土)付『日本経済新聞』の土曜版。「NIKKEI プラス1」の「何でもランキング」で取り上げられたテーマは「お仕事小説」でした。仕事に取り組む姿を描くお仕事小説。私を含めた12名の「専門家」の評価を点数化することで選ばれた15点の作品が…
高度成長期(1955~73年)にあって、年功序列、企業別労働組合とともに、「日本的経営」の「三大特徴」のひとつとされたのが「終身雇用制度」。新入社員として入った会社で定年まで働くというその制度。完全になくなったわけではないものの、すでに大きく変…
「老後資金を扱った作品」の第二弾は、松村美香『老後マネー戦略家族!』(中公文庫、2017年)。「夫婦が90歳まで生きるとすると、必要な金額は、年金を除けば3000万円」。そういう情報をもとに始まった、ある中流家庭のマネー戦略=「資金ゲット」作戦が描…
最近よく聞くようになった「人生100年時代」という言葉。背景にあるのは、高齢化の進展です。総務省の推計によると、2020年9月15日現在における「65歳以上の高齢者」の人口は、前年より30万人増えて3617万人と過去最多になっています。総人口に占める高齢者…
「鉄道業を扱った作品」の第四弾は、楡周平『鉄の楽園』(新潮社、2019年)。高速鉄道の国際入札で勝利を収めた台湾。ところが、その後の海外における受注競争で、成功したのはインドだけ。ほかの国々では、莫大な資金力をバックに「なんでもありの手段を駆…
「鉄道業を扱った作品」の第三弾は、吉田修一『路(ルウ)』(文春文庫、2015年)。日本を代表する総合技術で、高速鉄道技術の世界語にもなった「新幹線」が初めて海を渡ったのは台湾です。台湾への「新幹線の輸出」を素材にした本書では、台北と高雄間を結…
「鉄道業を扱った作品」の第二弾は、福田和代『東京ダンジョン』(PHP研究所、2013年)。東京の地下には、地下鉄を軸に、地下道やトンネル、ビルの地下街、共同溝、下水道からさらには首都圏外郭放水路という巨大な地下神殿のような構造物などが、まるで迷宮…
コロナ禍に伴う利用数の激減で、業績の低迷に悩まされている鉄道業。しかし、鉄道は国民にとっては欠くことのできない重要なインフラです。いまも、多くの鉄道会社では、駅ナカの充実、駅のリニューアル、駅周辺の再開発、新駅の整備、収益構造の多角化、次…
「個人商店を扱った作品」の第四弾は、小野美由紀『メゾン刻の湯』(ポプラ社、2018年)。東京・下町にある明治43年創業の昔ながらの薪で湯を沸かす銭湯「刻の湯」が舞台。銭湯でのお仕事内容、業界が抱える苦境、刻の湯で暮らしている「訳ありさん」たちの…
「個人商店を扱った作品」の第三弾は、三浦しをん『まほろ駅前多田便利軒』(文春文庫、2009年)。便利屋というお仕事の本質と苦楽が描かれています。庭にある猫の死骸を片づけてほしい。外れてしまった押し入れのつっかえ棒を取り付けてほしい。夜逃げした…
「個人商店を扱った作品」の第二弾は、本田久作『開ける男 鍵屋・圭介の解けない日常』(ポプラ文庫、2018年)。鍵屋の仕事は、開かない錠を開けること。深夜の依頼も多く、ヤバイ仕事の依頼もまれではありません。鍵屋に持ち込まれるさまざまな依頼と難題に…
日本各地で商店街の多くがいま、危機に陥っています。「シャッター通り」になっているところも例外ではありません。衰退を促した最大の理由は、大型のショッピングセンターとの競争激化にあると考えられています。見方を変えれば、商店街とは「道路に沿って…
「編集者を扱った作品」の第四弾は、三浦しをん『舟を編む』(光文社、2011年)。辞書作りの大変さと奥深さを描いた作品です。「辞書は、言葉の海を渡る舟」。辞書づくりは、「海を渡るにふさわしい舟を編む」という作業。2013年4月13日に公開された、石井裕…
「編集者を扱った作品」の第三弾は、早見和真『小説王』(小学館、2016年)。文芸という世界が「負のループ」の渦中にあるなか、小説の本質と、作家・編集者のそれぞれの役割を真っ正面から考察した作品です。小学校の同級生であった「売れない作家」と「二…
「編集者を扱った作品」の第二弾は、五十嵐貴久『編集ガール!』(祥伝社、2012年)。いきなり女性ファッション誌の編集長に抜擢されたのは、編集業務をまったく経験していない「すぶの素人」。経理部勤務であった女性が変身し、リーダーシップを発揮する様…
毎日、大量の本を世に送り出している出版業界。全国出版協会・出版科学研究所によると、2019年における推定販売金額は1兆5432億円でした。そのうち、紙の出版物(書籍・雑誌の合計)は、前年比4.3%減の1兆2360億円で、15年連続のマイナスとなりました(内訳…
「おもしろい経済小説」を多くの人に知ってもらいたい。そういう思いでスタートさせた「経済小説イチケンブログ」。本日、アクセス数が1万を突破しました。これもひとえに、日頃から見にきていただける「あなた」のおかげです。誠にありがとうございます。 …
「航空会社を扱った作品」の第四弾は、黒木亮『島のエアライン』(毎日新聞出版、2018年)。熊本県の「天草空港」の設立に至るまでの紆余曲折の経緯と、地方自治体が独力で経営する日本初の定期航空会社「天草エアライン」の苦難の道のりを描いた「ドキュメ…
「航空会社を扱った作品」の第三弾は、池井戸潤『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社、2014年、文春文庫、2017年)。帝国航空の立て直しをゆだねられた主人公の半沢直樹は、再建プランを練り上げ、「抵抗勢力」を論破して、初志貫徹を図っていきます。半沢直…
「航空会社を扱った作品」の第二弾は、江上剛『翼、ふたたび』(PHP研究所、2014年)。2010年1月19日、ナショナルフラッグとも言われた日本航空が経営破綻。再生の切り札として会長職(兼グループCEO)に招聘されたのは、京セラ代表取締役名誉会長の稲盛和夫…
われわれの生活と深く関わり、しかも最も多くの部品から成り立っている工業製品とはなんでしょうか? 答えは、飛行機です。例えば、自動車一台の部品数が2~3万点。それに対し、ジャンボ機一機の部品数はおよそ600万点に及びます。さらに、飛行機でヒトやモ…
「働く女性を扱った作品」の第四弾は、桂望実『ハタラクオトメ』(幻冬舎、2011年)です。働く女性の目線で、男性優位の会社の内実を見ていくと、不条理に満ち溢れていることがよくわかります。しかし、たとえ仕事の9割は虚しいものだとしても、残りの1割に…