経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

作品紹介

『リーダーになりたければ海に行け』 - 「居酒屋の大将」でもある「伝説のリーダー」

「チームリーダーを扱った作品」の第二弾は、中鉢慎『リーダーになりたければ海に行け』(つり人社、2014年)。幼稚園時代からおよそ「長」と付く役柄とは無縁の人生を送ってきた金田シンペイ(入社7年目の29歳)。社運を賭けたプロジェクトのリーダーに抜擢…

『リーダーはじめてものがたり』 - チームリーダーの諸条件 

会社や組織で、数年間働くと、常設部署の「長」は時期尚早だとしても、特定のプロジェクトチームなどのリーダーを任されることはまれではありません。なかには、それまでチームやグループを引っ張るという役回りなど演じてこなかった人がたくさんいます。自…

『マドンナ』 - 五人の男性課長

「職場の人間関係を扱った作品」の第二弾は、奥田英朗『マドンナ』(講談社文庫、2005年)。40代の男性課長5人の日常がユーモア溢れるタッチで浮き彫りにされています。その年代の課長と言えば、部長という上のポストを狙える位置にいるとはいえ、仕事のやり…

『無印OL物語』 - 問題を巻き起こすOLたち

会社という組織では、多種多様な人間が一緒に働くことになります。少なくとも勤務時間内においては、協力したり、分担したりして業務を遂行することが求められます。でも、職場を構成する人たちの性格・考え・体調・家庭環境は、まさに千差万別。たとえ表面…

『お悩み相談室の社内事件簿』 - 持ち込まれるちょっと不思議な相談事の真相

「相談室を扱った作品」の第二弾は、浅海ユウ『お悩み相談室の社内事件簿 会社のトラブルすべて解決いたします』(マイナビ出版ファン文庫、2019年)。総合商社「高岡物産」で、総務部が管轄する「お悩み相談室」の主任として異動することになった松坂紫音。…

『神様からひと言』 - お客様相談室の相談員になると……

人は皆、わからないことで悩みます。そんなとき、だれかのちょっとしたひと言が大いに参考となることはけっしてまれではありません。いろいろな人の相談に乗り、適切なアドバイスを行うことをビジネスとして行う「相談所」や、組織の構成員・顧客などを対象…

『国防特行班E510』 - 諜報の世界に投影される日米関係

「諜報機関を扱った作品」の第二弾は、神野オキナ『国防特行班E510』(小学館文庫、2021年)。「日本にとって最も逆らいたくない同盟国」であるアメリカ。日本のどの諜報機関もアメリカを相手にすることは、ほぼ想定外。日本の情報は、すべてアメリカに渡さ…

『外事警察』 - 「国際テロリスト・グループと戦う最前線」

「情報」という訳語が当てられる「インフォメーション」と「インテリジェンス」。前者はだれでも入手できる情報のこと。それに対して、後者は、政策決定者が安全保障や外交の分野で判断のよりどころとなるように選び抜かれた情報、端的に言えば諜報のことを…

『いずみ野ガーデンデザイナーズ』 - 仕事に行き詰ったデザイナーの再生物語

「デザイナーを扱った作品」の第二弾は、蒼井湊都『いずみ野ガーデンデザイナーズ ワケあり女子のリスタート』(光文社文庫、2019年)。東京でガーデンデザイナーとして働いていた丸井咲和29歳。左遷されそうになって、なにもかもが嫌に。父が倒れたことを口…

『凸凹デイズ』 - 個々のデザイナーとデザイン事務所の「幸せな関係」

私たちの生活は、お金を払ってさまざまなモノやサービスを購入することで成り立っています。それらの商品を選ぶ場合、一番気になるのはその品質や価格であるかもしれませんが、デザインやうたい文句などによって購買意欲が左右されることもまれではありませ…

『海亀たち』 - 東南アジアで働く「ボーダレス人間」の成長譚

「東南アジア・ビジネスを扱った作品」の第二弾は、ごく普通の日本人が現地で活躍するプロセスを追跡している加藤秀行『海亀たち』(新潮社、2018年)。ノルマ漬けの営業マンに疲れ果てた主人公が、ベトナムのダナンを皮切りに、ホーチミンやバンコクでビジ…

『[小説]日本企業はアジアのリーダーになれるのか?』 - 国内基準からアジア基準へ

20世紀末、「メイド・イン・ジャパン」の工業製品が世界中を席巻しました。とりわけ、アジア各国における日本企業の存在感は、際立っていました。ところが、いまや韓国・中国といったライバル国との熾烈な競争のなか、日本企業のパワーは大きく損なわれつつ…

『家政夫くんは名探偵!』 - 家事代行会社で働く美男子の探偵ぶりと仕事ぶり

「家事代行を扱った作品」の第二弾は、楠谷佑『家政夫くんは名探偵!』(マイナビ出版ファン文庫、2018年)。家事代行会社で働いている三上光弥。おどろくほど推察力に優れています。刑事の連城怜の家で仕事をしているとき、彼の抱えている事件の真相を言い…

『主婦やめます!』 - 家事代行業の円滑な運営には

共働きの一般化、人口の高齢化、単身者の増加などに伴い、掃除・洗濯・食事の提供・買い物などの家事を代行業者に委託することがごく普通に行われるようになってきています。時間的、身体的に家事を行うことが難しい人にとっては、非常に便利なサービスです…

『お局美智 経理女子の特命調査』 - 極意の情報を知り尽くして会社を守る

「経理を扱った作品」の第三弾は、明日乃『お局美智 経理女子の特命調査』(文春文庫、2020年)。終戦直後に先々代の野村千代作が創業し、先代の作太郎が育て、三代目の勇作が社長を務めている同族会社のNOMURA建設(従業員150名)。そこで経理の仕事をしな…

『やってられない月曜日』 - 仕事に新鮮味を感じなくなったOLがやる気を取り戻す

「経理を扱った作品」の第二弾は、柴田よしき『やってられない月曜日』(新潮社、2007年)。会社に入って何年か経ち、仕事にも慣れてくると、新鮮味がなくなってくるのは、世の常。単調な出来事の繰り返しのなかで、常にモチベーションをもって仕事に接し続…

『これは経費で落ちません!』 - 経理から見る社内の人間模様

経理の仕事は、一言で表現すれば、会社のお金を管理すること。経営者が経営判断をするために必要な決算書の作成のほか、現金の出納管理、経費の精算、伝票の記帳・整理、売掛金・買掛金の管理、従業員の給与や社会保険料の計算など、非常に幅広い業務をカヴ…

『マイ・ディア・ポリスマン』 - 交番に勤務する巡査の日常

「交番を扱った作品」の第三弾は、小路幸也『マイ・ディア・ポリスマン』(祥伝社文庫、2020年)。架空の町・奈々川市坂見町にある東楽観寺前交番に赴任して2カ月が経過したお巡りさん(ポリスマン)の宇田巡。同寺の跡取り息子で副住職でもある大村行成。小…

『新任巡査 下巻』 - 優秀な女性巡査を苦しめてきた過去の秘密

「交番を扱った作品」の第二弾は、古野まほろ『新任巡査』下巻(新潮文庫、2016年)。上巻からの延長で、新任巡査が交番勤務を行う際の様子や指導役となる上司との絡みが詳しく、かつ具体的に解説されています。ただ、上巻の主人公である上原頼音は、誠実で…

『新任巡査 上巻』 - ホンネで綴られる巡査の職務と心構え

警察の機能には、行政警察活動(犯罪の予防や治安の維持など)、司法警察活動(すでに起こった犯罪の捜査や犯人逮捕など)、公安警察活動(反政府活動・暴動の調査や警戒、防諜など)の三つがあると言われています。なかでも、非日常的な驚きの要素がたくさ…

『道をたずねる』 - 日本に住宅地図を普及させる! 

「はじめて物語」の第三弾は、平岡陽明『道をたずねる』(小学館、2021年)。別府で、天沢永伍が興した地図会社「キョーリン」。設立7年目、社員は20名たらずで、零細企業の域を出ていない状態でした。が、創業社長には、「いつの日か、日本の全建物と全氏名…

『繭と絆』 - 「日本初の工女・尾高勇」の物語

「はじめて物語」の第二弾は、植松三十里『繭と絆 富岡製糸場ものがたり』(文春文庫、2019年)。富岡製糸場は、日本で最初に蒸気機関を使った大規模で、近代的な国営の製糸工場として知られています。フランス人のお雇い外国人を指導者に招いて建設されまし…

『「横浜」をつくった男』 - 高島嘉右衛門の波乱万丈

新しい年を迎えるとき、毎年、それまでにはなかった新しいことを見つけてみたいとか、なにかにチャレンジしてみたいとか、そんな気持ちにさせられます。ところが、同じような日常が繰り返されていく過程で、いつのまにか、そのような気持ちは徐々に萎えてい…

『洗濯屋三十次郎』 - どこまでも不器用な男が感じ、行ったこと

「職人を扱った作品」の第三弾は、野中ともそ『洗濯屋三十次郎』(光文社文庫、2021年)。大手の取次チェーンではない、個人経営の小さなクリーニング店「中島クリーニング」。その店長になったのは、地味で、不器用で、自分からは動こうとしない、クリーニ…

『虹にすわる』 - 椅子づくりと格闘する職人ふたり

「職人を扱った作品」の第二弾は、瀧羽麻子『虹にすわる』(幻冬舎文庫、2022年)。「真面目一筋で、細かいことにも目が届き、木工技術には光るものを持っている徳井律」と「真面目とは言いにくいものの、独創的なデザイン力を有している魚住光」。対照的な…

『削り屋』- 職人たちが織りなす「奥深い世界」

「職人気質」という言葉があります。「自分の腕に絶対的な自信を持ち、頑固で実直な気質」を意味しています。モノの生産に機械が導入される前、すべては「手作り」でした。そこでは、「モノの生産者=職人」という等式が成り立ちました。しかし、技術が発展…

『ご用命とあらば、ゆりかごからお墓まで』 - デパート外商部の「驚き」! 

「デパートを扱った作品」の第二弾は、「顧客のためにはどんな要望でも受けたまわる」という外商の活躍を描いた真梨幸子『ご用命とあらば、ゆりかごから墓場まで』(幻冬舎文庫、2020年)です。万両百貨店外商部のトップセールス・大塚佐恵子や営業成績ナン…

『ごちそうは残業のあとで』 - デパ地下食品フロアの活性化を図れ!

コンビニ、スーパーマーケット、デパート、アウトレット、専門店など、一口に「小売業」と言っても、内実は非常に多様です。いまなら、どの業態のお店でも普段着で買い物を楽しむことができます。ただ、私のような年代になると、デパートで買い物をするとき…

『社長室の冬』 - 日本新報の外資への売却交渉の中で

「堂場瞬一の『メディア三部作』」の第三弾は、『社長室の冬』(集英社、2016年)です。日本新報の社長室に異動した南康祐。取材とはまったく関係のない部署に移ってまだニケ月目。仕事にはなじめていません。ところが、同社の外資への売却話が進むなか、推…

『蛮政の秋』 - 一通のメールからあぶり出される「政治家の闇」

「堂場瞬一の『メディ三部作』」の第二弾は、『蛮政の秋』(集英社文庫、2018年)です。東京本社社会部で働くようになった新聞記者・南康祐と野党・政友党の国会議員・富永卓生。両者のもとに届いた、「50人もの政治家に対するIT企業による現金のばらまき疑…