経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

2022-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『第三の買収』 - MBO (マネジメント・バイアウト)

「企業買収を扱った作品」の第二弾は、牛島信『第三の買収』(幻冬舎、2007年)です。M&A のひとつに、MBO (マネジメント・バイアウト)と呼ばれる手法があります。それは、企業の経営陣が投資ファンドや金融機関から資金を調達し、既存の株主から自社の株…

『バイアウト』 - 企業買収をめぐるさまざまな人間模様

株式を上場している限り、だれかに株式が買い占められ、乗っ取られるという懸念は完全に払しょくできません。実際、企業買収、M&A(合併と買収)、TOB(株式公開買い付け)といった言葉は、いまではごく日常的に起こりえることとして広く知られています。ち…

『ホテル・コンシェルジュ』 - コンシェルジュは名探偵

「ホテルコンシェルジュを扱った作品」の第二弾は、門井慶喜『ホテル・コンシェルジュ』(文春文庫、2015年)です。「ホテルポラリス京都」が舞台。そこに長期滞在している大学生の桜小路清長が持ち込んでくる厄介ごとの数々に、コンシェルジュの九鬼銀平と…

『小説版 ホテルコンシェルジュ』 - 「おもてなし」の最前線

旅先のホテルで、なにか困ったことが起こり、だれかに聞いてみたいと思ったことはありませんか? そんなとき、適切なアドバイスやサポートをしてくれるのが、コンシェルジュです。彼らが詰めているデスクは、「総合案内所」であり、「なんでも相談所」でもあ…

『エネルギー』 - 「国際資源戦争」の最前線

「石油を扱った作品」の第三弾は、黒木亮『エネルギー』(上下巻、角川文庫、2013年)。イランで発見された新油田をめぐる日本の通産省・商社の思惑と外国企業を引っ張り込みたいイラン側の思惑、「日の丸」油田に対するアメリカの横やり、サハリンの巨大ガ…

『アラビア太郎』 - アラビア石油・創業者の波乱万丈

「石油を扱った作品」の第二弾は、杉森久英『アラビア太郎』(集英社文庫、1981年)です。巨大な石油メジャーに対抗し、ズブの素人であるにもかかわらず、無謀にもペルシア湾での油田開発に挑戦し、成功した最初の日本人。「アラビア石油」の創業者である山…

『油断!』 - 「300万人の生命と全国民財産の7割が失われる」

自動車、飛行機、船などを動かすエネルギーとしてだけではなく、プラスチック・ペットボトル・ビニールといった日用品や、化学繊維による衣料の原料としても広く使われている石油。石油の獲得をめぐる争いは常に熾烈で、現代史を彩るメインテーマのひとつに…

『黄金の稲とヘッジファンド』 - 「世界最大のヘッジファンド」のジレンマ

「ヘッジファンドを扱った作品」の第二弾は、波多野聖『黄金の稲とヘッジファンド』(角川文庫、2021年)。国内で最大級のヘッジファンドと称される金融機関があります。農業協同組合、森林組合、漁業協同組合の系統中央機関の役割を有する金融機関である農林…