経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

2023-12-01から1ヶ月間の記事一覧

『洗濯屋三十次郎』 - どこまでも不器用な男が感じ、行ったこと

「職人を扱った作品」の第三弾は、野中ともそ『洗濯屋三十次郎』(光文社文庫、2021年)。大手の取次チェーンではない、個人経営の小さなクリーニング店「中島クリーニング」。その店長になったのは、地味で、不器用で、自分からは動こうとしない、クリーニ…

『虹にすわる』 - 椅子づくりと格闘する職人ふたり

「職人を扱った作品」の第二弾は、瀧羽麻子『虹にすわる』(幻冬舎文庫、2022年)。「真面目一筋で、細かいことにも目が届き、木工技術には光るものを持っている徳井律」と「真面目とは言いにくいものの、独創的なデザイン力を有している魚住光」。対照的な…

『削り屋』- 職人たちが織りなす「奥深い世界」

「職人気質」という言葉があります。「自分の腕に絶対的な自信を持ち、頑固で実直な気質」を意味しています。モノの生産に機械が導入される前、すべては「手作り」でした。そこでは、「モノの生産者=職人」という等式が成り立ちました。しかし、技術が発展…

『ご用命とあらば、ゆりかごからお墓まで』 - デパート外商部の「驚き」! 

「デパートを扱った作品」の第二弾は、「顧客のためにはどんな要望でも受けたまわる」という外商の活躍を描いた真梨幸子『ご用命とあらば、ゆりかごから墓場まで』(幻冬舎文庫、2020年)です。万両百貨店外商部のトップセールス・大塚佐恵子や営業成績ナン…

『ごちそうは残業のあとで』 - デパ地下食品フロアの活性化を図れ!

コンビニ、スーパーマーケット、デパート、アウトレット、専門店など、一口に「小売業」と言っても、内実は非常に多様です。いまなら、どの業態のお店でも普段着で買い物を楽しむことができます。ただ、私のような年代になると、デパートで買い物をするとき…

『社長室の冬』 - 日本新報の外資への売却交渉の中で

「堂場瞬一の『メディア三部作』」の第三弾は、『社長室の冬』(集英社、2016年)です。日本新報の社長室に異動した南康祐。取材とはまったく関係のない部署に移ってまだニケ月目。仕事にはなじめていません。ところが、同社の外資への売却話が進むなか、推…

『蛮政の秋』 - 一通のメールからあぶり出される「政治家の闇」

「堂場瞬一の『メディ三部作』」の第二弾は、『蛮政の秋』(集英社文庫、2018年)です。東京本社社会部で働くようになった新聞記者・南康祐と野党・政友党の国会議員・富永卓生。両者のもとに届いた、「50人もの政治家に対するIT企業による現金のばらまき疑…

『警察回りの夏』 - 「誤報」から始まる「メディア三部作」

スポーツ小説や警察小説の分野で数々のヒット作を出している堂場瞬一。そんな作者が若き新聞記者・南康祐を主人公にして、時代の荒波に揉まれて揺れ動いている新聞社が直面している課題・難題に真っ正面から挑んだ作品を上梓されています。『警察(サツ)回…