経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

『小説 ヘッジファンド』 - デリバティブを駆使する「現代の相場師」

舞台は為替、債券、株式などの金融市場。突然出現し、空売りや裁定取引、デリバティブ(金融派生商品)といった高度な手法を駆使して、集中的に投機行為を行います。マーケットを荒らし、膨大な利益をもぎ取っては去ってしまいます。それが、ヘッジファンド…

『あしたの君へ』 - 家裁調査官補の成長物語

「家裁調査官を扱った作品」の第二弾は、柚月裕子『あしたの君へ』(文芸春秋、2016年)。家裁調査官になるためには、まずは裁判所職員採用総合職試験に合格することが必要です。さらに、2年間の養成課程研修を受けます。研修を受けている間は「家裁調査官補…

『家裁調査官・庵原かのん』 - 非行少年に厚生の道筋を! 

家庭裁判所(略して「家裁」)とは、離婚・遺産相続をはじめとする家庭内のあらゆる問題(家事事件)と少年が起こした事件(少年事件)を扱う裁判所のこと。全国に50ケ所。支部が203ケ所、出張所が77ケ所あります。家裁でいう「少年」とは、罪を犯した場合に…

『広告の会社、作りました』 - フリーのデザイナー+コピーライター=新感覚の広告制作会社

「広告会社を扱った作品」の第五弾は、中村航『広告の会社、作りました』(ポプラ社、2021年)です。広告会社「アド・プラネッツ」が突然倒産することで、就職活動をする羽目に陥ったデザイナーの遠山健一と、フリーランスとして個人事務所を開設しているコピ…

『花のさくら通り』 - 零細広告制作会社と「地域の活性化」

「広告会社を扱った作品」の第四弾は、荻原浩『花のさくら通り』(集英社文庫、2015年)です。都心のオフィスから郊外のさびれた「さくら通り商店街」に引っ越しを余儀なくされた「ユニバーサル広告社」。生き残りをかけた活動を展開するには、地域における存…

『CC:カーボンコピー』 - 中堅広告代理店とクライアント 

「広告会社を扱った作品」の第三弾は、幸田真音『CC:カーボンコピー』(中央公論新社、2008年)です。主人公は、業界中堅の広告代理店「ナガサワ・アド・エージェンシー」に勤める山里香純41歳。広告業界の業務内容や仕事の仕組み、代理店に広告を依頼するク…

『夏の果て』 - 元電通トップクリエーターの自伝的小説

「広告会社を扱った作品」の第二弾は、岡康道『夏の果て』(小学館、2013年)です。著者は、元電通のトップクリエーター。1999年に日本初のクリエイティブ・エージェンシー「TAGBOAT」を創設。少年時代から始まり、電通に入社し、CMプランナー(テレビ・ラジ…

『小説電通』 - 広告代理店同士の熾烈なバトルの行方

目の前に欲しいモノがいくつかあり、どれかを選ぶとします。そんなとき、決め手となるのは、商品の品質・価格・デザイン・評判など、多様です。しかし、広告もまた、判断に大きな影響を与えるのではないでしょうか? 実際、広告の良し悪しは、商品の売れ行き…

『社長のテスト』 - トップの姿を複眼的に描いた「小説仕立てのビジネス書」

「会社のトップを扱った作品」の第五弾は、山崎将志『社長のテスト』(日本経済新聞出版社、2012年)。ベンチャー企業が火災に見舞われ、崩壊の危機に直面。対応を現場に丸投げしようとする阿部常夫社長に代わり、復旧作業を主導したのは、部長の西村健一で…

『Hello, CEO』 - ごく平凡な青年がベンチャー企業のトップに

「会社のトップを扱った作品」の第四弾は、幸田真音『Hello, CEO』(光文社、2007年)です。潜在的な力を持ちながらも、ごく平凡なサラリーマン生活を過ごしていた藤崎翔が、最年少ながら、ベンチャー企業の最高経営責任者(CEO)に就任。果たして、会社はど…

『小説 創業社長死す』 - ワンマンのオーナー経営者の光と影

「会社のトップを扱った作品」の第三弾は、高杉良『小説 創業社長死す』(角川書店、2015年)です。東邦食品工業の創業者で、オーナーでもある小林貢太郎。「飛ぶ鳥を落とす勢い」で会社を発展させてきた彼が急死。彼がいないと何事も機能しないワンマン体制…

『ライバル』 - 社長の資質とは? 

「会社のトップを扱った作品」の第二弾は、安土敏『ライバル』(ダイヤモンド社、2011年)。同じ年に総合商社に入社した二人の男性。やがて次期社長の座を争うライバルに。両者間で繰り広げられる「つばぜり合いと心の交流」が、関連会社との関係や川下作戦…

『器に非ず』 - 社長の「器」とは? 

会社の発展のために決定的に欠かせない条件のひとつとして、「トップ(社長・会長)の力量」が挙げられます。いかに優秀な社員が揃っていたとしても、彼らの能力をうまく発揮させ、目標や課題に向けてコーディネートしていくリーダーがいなければ、組織は円…

『大班』 - 「中国人との付き合い方」+「中国ビジネスの極意」

「中国ビジネスを扱った作品」の第三弾は、加藤鉱『大班 世界最大のマフィア・中国共産党を手玉にとった日本人』(集英社、2015年)。昼間は官僚、夜は「マフィアのボス」。二つの顔を使い分ける中国人エリートたち。一方で、知らない間に、利益を抜かれる日…

『黄土の疾風』 - 日中両国を知り尽くしたがゆえの行動力

「中国ビジネスを扱った作品」の第二弾は、深井律夫『黄土の疾風』(ダイヤモンド社、2011年)。荒廃した中国農業の復興のみならず、自給率の低下、担い手不足、耕作地放棄が急速に進行している日本農業の危機をも克服するため、投資ファンド「疾風ファンド…

『周極星』 - 混沌さと不思議なバイタリティが共存する国=中国

2010年、日本を凌駕し、世界第二位の経済大国になった中国。現在では、一人当たりのGDPでも「高所得国」の水準に近づきつつあります。巨大な市場であり、「世界の工場」でもある同国に対する世界のビジネス界の関心は半端なものではありません。しかし、中国…

『メイド・イン・ジャパン』 - 粗悪品からの脱却に尽力する経営者の夢と挫折

「戦後復興期を扱った作品」の第三弾は、城山三郎の短編小説「メイド・イン・ジャパン」(『総会屋錦城』新潮文庫、1963年所収)。「私の夢は、メイド・イン・ジャパンと刻印した湿度計をアメリカに輸出すること!」 品質の改善に力の限りを尽くした湿度計メ…

『三等重役』 - 戦後派サラリーマン社長の心の揺れと不安

「戦後復興期を扱った作品」の第二弾は、源氏鶏太『三等重役』(新潮文庫、1961年)。1951年8月23日号から52年4月13日号の『サンデー毎日』に連載され、話題を呼んだサラリーマン・ユーモア小説。「三等重役」とは、公職追放によって、戦前からの経営者が多…

『小説GHQ』 - 戦後日本の始まりは、焼け野原の中での茫然自失から

1945年の終戦から高度成長が始まる1955年までの「戦後復興期」。日本ではまだ、戦災の爪痕が大きく残り、人々は物資・食糧の欠乏に苦しんでいました。焼け野原の中での茫然自失から始まった戦後日本の第一歩は、どのようなものだったのか? 歩むべき道など、…

『最後の総会屋』 - アイドル歌手を売り込んだ総会屋

「総会屋を扱った作品」の第三弾は、大下英治『最後の総会屋』(徳間文庫、1995年)。「広島グループ」と呼ばれ、女性デュエットのアイドル歌手である「ピンクレディー」を連想させる「フラワーレディー」の実質上のスポンサーでもあった総会屋が主人公。す…

『小説 総会屋』 - 総会屋の実態・やり口・ノウハウ! 

「総会屋を扱った作品」の第二弾は、三好徹『小説 総会屋』(集英社文庫、1983年)。総会屋の実態、やり口、ノウハウが見事に描かれています。1982年に、従来のような総会屋主導の株主総会を排除し、その健全性を回復することを目的として、商法が改正された…

『総会屋錦城』 - 企業の味方か、敵か? 

企業の株主総会がピークとなった2022年6月29日。東京証券取引所によると、3月期決算の上場企業の26%に当たる約600社で、株主総会が開かれました。コロナ禍を受け、オンライン開催が増加し、お土産の廃止も広がるなど、総会も様変わり。しかし、最も大きな変…

『ハゲタカ2.5 ハーディ』 - 外資の傘下に入ったミカドホテルの奪還劇

「ホテルを扱った作品」の第二弾は、日本を代表する老舗クラシックホテルを舞台にした真山仁『ハゲタカ2.5 ハーディ』(講談社文庫、2017年)。経営難に陥り、世界的なリゾートグループ「リゾルテ・ドゥ・ビーナス」傘下に入っていた日光ミカドホテルの創業…

『リベンジ・ホテル』 - 地域経済の「鏡」としてのコミュニティホテル

「ホテルを扱った作品」の第二弾は、危機に瀕するコミュニティホテルを描写した江上剛『リベンジ・ホテル』(講談社文庫、2012年)。東京郊外にあるコミュニティホテルの苦境と、再生に向けての諸方策がメインに扱われています。また、ホテルに勤務する人の…

『TEN』 - 日本最大のホテルチェーンの創設史

コロナ禍で人の移動が抑制され、大きく利用客が減ったものの、ここにきて、復調の兆しが見えつつある宿泊業。近い将来、本格的なインバウンドの到来とともに、業績回復が期待されています。今回は、宿泊業のうち、ホテルに焦点を合わせた作品を三つ紹介しま…

『投資アドバイザー有利子』 - 自己責任+リスクへの覚悟+アドバイス=資産運用

「証券会社を扱った作品」の第五弾は、幸田真音『投資アドバイザー有利子』(角川書店、2002年)です。顧客目線で資産運用の相談に乗ってくれる財前有利子(ざいぜん ありこ)のプライド・信念・生きがいが描写。また、運用されている金融商品、デイ・トレー…

『会社葬送』 - 山一證券の最後を看取った男たち

「証券会社を扱った作品」の第四弾は、江波戸哲夫『会社葬送 山一證券最後の株主総会』(新潮社、2001年)です。1897年に創業され、野村、大和、日興とともに「四大証券」の一角を担っていた山一證券。ところが、損失補填や「にぎり」など、相次ぐ不祥事を重…

『小説兜町』 - 株屋から証券会社へ:転換期の実相

「証券会社を扱った作品」の第三弾は、清水一行『小説兜町(しま)』(角川文庫、1983年)です。日本資本主義のメッカと称される株の町・兜町。そこで「最後の相場師」と言われつつも、「株屋から証券会社への近代化」の過程で、証券会社を追われていく山鹿…

『百戦百勝』 - 戦前の米相場と株相場がリアルに

「証券会社を扱った作品」の第二弾は、城山三郎『百戦百勝 働き一両・考え五両』(角川文庫、1979年)です。「山種証券」の創始者で、「相場の神様」と言われた山崎種二がモデル。寒村の貧しい農家で生まれ、東京の米問屋の小僧として働くようになる主人公の…

『大番』 - 証券会社の「昔と今」

東京証券取引所があり、「日本のウォール街」とも呼ばれている日本橋兜町。戦前は、「シマ」と呼ばれました。そこは、玄人の投資家や相場師たちが躍動する世界で、営業する証券会社は「株屋」と称されていました。ところが高度成長期、「素人の個人投資家」…