経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『買収者』 - 企業法の専門家が構想する企業買収のリアル

「企業の合併・買収を扱った作品」の第三弾は、牛島信『買収者 アクワイアラー』(幻冬舎、2000年)。別の財界人の妻でありながらも、長きにわたって恋焦がれていた女性を奪うため、その男の会社を乗っ取ろうとする実業家の話。著者の牛島信は、ビジネス・ロ…

『企業買収』 - M&Aの実務とノウハウが満載! 

「企業の合併・買収を扱った作品」の第二弾は、木俣貴光『企業買収 海外事業拡大を目指した会社の660日』(中央経済社、2012年)。大手食品会社による中堅企業買収プロジェクトの始まりからクロージングまでの全プロセスが厳密に再現されています。コンサル…

『乗取り』 - モデルは白木屋百貨店の乗っ取り事件

企業は、規模の拡大、新規分野への参入、グローバルな展開、後継者不在への対応など、さまざまな理由で他の企業の合併・買収(M&A)を行います。2019年、日本企業が関わった企業の合併・買収の件数は前年比6.2%増の4088件。過去最多になっています。企業買…

楡周平さん『TEN』の解説を執筆しました

2021年2月10日、私が解説を書かせていただいた楡周平さんの『TEN』(上下巻、小学館文庫)が上梓されました。本書は、横浜のドヤ街で育った中卒の主人公・小柴俊太が、料亭の下足番を経て、一流ホテルに就職し、社長の右腕として実力を発揮するという一大サ…

『ランウェイ』 - きらびやかなディスプレイの裏に

「アパレルを扱った作品」の第二弾は、幸田真音『ランウェイ』(集英社、2011年)。最初はショップの店員。次はイタリアの有名ファッション・ブランドの女性バイヤー。最後は、ニューヨークで「MIDI」(フランス語で昼の意味)というファッション・ブランド…

『アパレル興亡』 - 栄華盛衰:アパレル業界の戦後史

「食べること」と「住むこと」とともに、人間の最も基礎的な経済活動に「着ること」があります。「着ること」、つまり衣服の製造および流通に関わる活動は、アパレルと呼ばれています。その業界で働く人は、きわめて多様です。衣服の企画に携わるファッショ…

書評:楡修平『ヘルメースの審判』

『カドブン』(KADOKAWA文芸WEBマガジン)の「レビュー欄」(2021年1月29日)で、楡修平さんの新刊『ヘルメースの審判』に関するわたしの書評が掲載されました。以下に、その要約を紹介したいと思います。 いまや、グローバルな規模で展開されている企業間競…

経済小説イチケンブログ2周年

「経済小説イチケンブログ」を始めて、ちょうど2年が経過しました。この1年間、「作品紹介」の中で取り上げた作品数は104点。取り上げたテーマ数は30でした。テーマについては、以下の表に示されるように、経済や企業の動向、業界・業種、仕事・働く人など、…

『動く不動産』 - 「土地転がし」や「地上げ」 が流行語になる

「バブルの時代を扱った作品」の第三弾は、姉小路祐『動く不動産』(角川文庫、1998年)。土地の価格が鰻登りに上昇し、「土地転がし」という言葉が流行したバブル期。では、そうした地価高騰がどのように実現されていったのでしょうか? それには、それを推…